外交官石井菊次郎の中国分析

 
 福井雄三著『板垣征四郎と石原莞爾』という本を読んでいたら、著者が戦前の外交官石井菊次郎の中国に対する分析を載せていました。それがとても興味深くて、今回それについて感想を書いてみたいと思います。ちなみに石井菊次郎はアメリカとの石井-ランシング協定を結んだことで有名です。

 「シナの歴史のこの恐ろしい悲劇的な一頁が教える教訓とは何なのか。簡単に言えばこういう事だ。つまりシナは外国人の邪悪な点だけを指摘して、自分自身の間違いは何一つ認めようとしなかったのである。シナは自分自身を世界に冠絶した国家であると考え、あらゆる非難を列強諸国に向け、自分自身を何一つ責めようとしなかった。このような態度の中に、日本のそれとは異なるシナの特異な国民性を探る糸口がみつかる。
 日本が開国して間もない頃に外国の侵入勢力とぶつかった経緯は、現在のシナのそれと全く同じである。我が日本の無防備な海岸は外国の戦艦に砲撃された。不平等条約が日本に押し付けられた。治外法権の恥辱の烙印がわれわれにおされ、日本は関税自主権を失った。日本が管轄している国土の中に、外国の租界が作られた。
 このような状況を打開する為に日本はいかなる方法をとったか。答えはただひとこと、自己検証である。日本は自分自身の欠点を認めた。日本は決して排外運動を煽り立てたりしなかった。シナの義和団事変に相当するようなものは、日本では何一つ起きなかった。」(73頁)

 私はこの分析に半分賛成で半分反対である。確かに明治維新以後日本がとった行動は石井の主張する通りだった。しかしそれだけでは日本が領事裁判権や関税自主権を欧米諸国に放棄させる事にはならなかったのである。日本は1907年の日露新通商航海条約ではじめて関税自主権を獲得した。そして米国との間でも日米通商航海条約が新たに結ばれたのである。これは何を意味するのだろうか。

 読者にはもうお分かりだろう。日本が日露戦争に勝利たことで欧米諸国ははじめて条約改正に同意してくれたのである。議会や憲法などの国内改革だけでは不十分だったのである。

 同じような事は中国にも言える。中国が欧米諸国に不平等条約を改正してもらう為には、その実力を世界に認めさせる必要があったのである。そこで相手に選ばれたのが日本だった。これが戦前の日中関係の悲劇につながったのである。中国共産党が対日戦争勝利にこだわるのは、共産党の正統性を誇示するためであろうが、今言ったような事の側面があるものと思われる。
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by masaya1967.7 | 2009-10-20 15:14
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