『アメリカ外交』を批評する。2


 さて、本題に入ります。村田教授が引用しているウォルター・ミードの本では、アメリカ外交のパターンをそれぞれ代表的な政治家の名前をとって4種類に分けています。1、ハミルトニアン 2、ジェファソニアン 3、ウィルソニアン 4、ジャクソニアン、となっています。

 私は、これらの考え方がお互いどういうふうに関係して、また将来はどのパターンが優勢になるだろうかという予想を行っているのかと期待しましたが、見事に期待は裏切られました。彼は「アイゼンハワーはジェファソニアンの典型である」というふうに最初から最後までどれにあてはめられるか分類しただけだったのです。

 そこで私はこれから村田教授の解説をかりながら、この4分類を用いてアメリカの外交を予想してみたいと思います。今回はまずハミルトニアンとウィルソニアンを解説して次に私がもっとも尊敬するジエファソニアンに進み、最後に日本人にとって最も厄介であったジャクソニアンで締めくくります。

 まずはハミルトニアンの考え方です。アレキサンダー・ハミルトンはワシントン大統領の初代財務長官でした。「この流れは北東部の利害を代弁して、国際通商のなかで発展するアメリカを想定」したと教授は書いています。これを一般日本人の馴染み深いキーワードにすれば「市場開放しろ」になります。

 次にウィルソニアンです。これは第一次大戦時の大統領ウッドロー・ウィルソンの考え方で「民主主義的な理念を世界に押し広めることこそアメリカの使命でなければならない」と村田教授は書いています。これはアメリカがよく使う「民主化しろ」になります。

 さて、このウィルソニアンとハミルトニアンは第2次大戦以前から中国とのかかわりが深かったのでした。イギリスの歴史家クリストファー・ソーンは中国とウィルソニアンの結びつきを次のように書いています。

 「ウィルソンの徒たちは、とくに中国をアメリカにならって幸福と繁栄の未来へと導きいれなければならない特別な後見人と考えていた。『アメリカ像が世界像を、そして間接的にアジア観を生んだ』のである。このような信念が生まれたのは1830年頃から中国でのアメリカ人宣教師の不屈の努力、とりわけ1890年から1920年にかけての彼らの熱心な運動に多くを負っている。」

 これらの人たちは、片岡鉄哉先生の言葉を借りれば、蒋介石政権がクリスチャン アンド デモクラティックになることを夢想したのである。当然彼らは中国をいじめていると思っている日本が大嫌いであった。

 さらに、ソーンは『満州事変とは何だったのか』でフーバー政権の国務長官であったヘンリー・スティムソンについて「『新ハミルトン主義者』と呼ばれる一派、すなわち、マハンやセオドア・ルーズベルトにならって、アメリカが力の行動によって国益を拡大する機会を歓迎した一派のかつてのメンバーであった」と書いています。

 1920年代の日本は中国のナショナリズムやそれに伴う「革命外交」に悩まされます。ウィルソニアン達に中国を抑制してと頼んでも無駄でしたが、この当時はウィルソン大統領を輩出した民主党は野党でしたので日本にはラッキーでした。そこで日本は力を用いてくれそうなハミルトニアンが多数存在する共和党政権にお願いしました。しかし日本は共和党政権からもノーと言われるはめに陥ってしまいます。その答えはスティムソン長官の次の言葉ではっきりします。

 「中国との交易は巨大な可能性を秘めていて、中国が近代文明への道を歩めば、それにともなって必要となった物資を供給できる」

 このように考えていましたから共和党政権が蒋介石政権に武力を使う事はほとんど考えられず、日本は孤立し、最後に怒った陸軍が満州事変を起こしたのでした。

 さて、現在の中国は「共産党独裁のもと豊かになりつつある」というハミルトニアンとウィルソニアンが対決する格好の場となります。オバマ大統領は現在中国に滞在していますが、もうほとんど結果は見えています。大統領は一応講演で人権問題には触れましたが、あまり深く追求するつもりはないのでしょう。クリントン国務長官も中国を訪問した時に人権問題には全く触れなかったため、アメリカの新聞から批判されていました。

 今日の『朝日新聞』に天安門事件の参加者を支援する弁護士が「人権を重視するはずの米国が力をつけてきた中国に何も言えない。失望した」と語っているのをのせていました。

 結果的に「理念」のアメリカは「強欲」のアメリカに敗れつつあります。この関係は日本に対して典型的に現れています。片岡先生は「占領下の日本は完全にアメリカの傀儡であったが、たったひとつアメリカが尊敬したものがあった。それは選挙に反映した民意である。アメリカは選挙にでる民意の前には必ず頭を下げる。日本は、これを使う以外にアメリカにノーという方法が無い」

 先生が指摘したように鳩山総理は選挙で選ばれてアメリカにノーと言ったのである。そしたらゲーツ国防長官に更に大きな声でノーと言われてしまった。現在のアメリカは日本の選挙の民意さえ考慮してくれない国になってしまっているのである。

 いったいウィルソンの理念はどこにいってしまったのだろう。

 次回はジェファソニアンについて書きます。

 
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by masaya1967.7 | 2009-11-18 03:27
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