November 3,2008の『ニューズ・ウィーク』にRuchir Sharmaという人がアメリカの大恐慌と日本のバブル崩壊を比較したおもしろい記事を書いています。シャルマはモルガン・スタンレーに勤めており、石油価格が下がる前から、これはバブルだと正しい指摘をしていました。
この記事によれば、国と民間の借金がGDPの300%に達しようとしているのは、アメリカの1920年代と日本の1980年代にしか見当たらないそうです。(今回のサブプライムの危機は350%もあるのだそうです) アメリカが大恐慌に陥った時、財務長官アンドリュー・メロンの意見はシュンペーターやハイエクの意見を取り入れ、不良資産や余った人や在庫を『清算』してしまえというものだった。自由にすれば何もかもうまくいくというアメリカらしい考え方がはっきされたわけである。 その結果1929年から1933年アメリカの経済規模は半分になり、物価は3分の1になり失業率は25%にものぼっている。しかしこれによって借金はGDPの150%にまで減ったのである。借金が減ったため民間の投資により生産性の拡大が起き、10年後にはアメリカの経済規模は倍になったのである。 一方日本は、アメリカのように市場に任せることはなく財政支出や金利を下げることによって経済を成長させようとした。そのために1989年に75%であった国の借金の割合が175%となり、民間の借金の割合が225%から150%にまで落ちているが、総額ではあまり変わっていない。国の借金の割合が大きくなったため日本の生産性の上昇は微々たるものとなってしまい、1989年から現在まで25%しか経済規模は大きくなっていないのである。 現在のアメリカが1920年代の処方箋を採ることは不可能であろう。だからシャルマのサブタイトルは「数週間前まで日本の状態に陥ることは最悪のシナリオとされていたが今ではそれが最高のケースになっている」となっている。 最後にシャルマは日本の企業が1989年までの借金をそれ以上続けていけなかったようにアメリカの消費者がこれ以上の消費を続けていくことは不可能であるとし、アメリカの成長は低下せざるをえないと予想している。 彼の議論の良いところは、日本のやり方が無能であるとかアメリカの方が有能であるという価値判断をおこなっていないところである。日本のやり方によいところと(失業率が25%もいかなかった)やその結果の悪い面(生産性が伸びない)があったことは間違いないが、日本やアメリカの良いところだけをとろうとする魔法の杖はないのである。
by masaya1967.7
| 2008-10-29 19:20
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