『草思社』が倒産して鳥居民さんの『昭和20年』はどうなってしまうのだろうと思っていたところ、今回新刊が出てきて読者としては喜ばしい限りです。自分が重要だと思ったところを書いてみます。
グルーが昭和19年5月に国務省の局長ポストに就いたのは、日本との講和をルーズベルト大統領が急いだ為である。ルーズベルトは国民党の将来が心配になったのである。 昭和天皇とその弟であられる高松宮陛下が昭和16年11月30日に会談を行うが、高松宮の後ろには山本五十六がおり、彼は天皇の聖断によって日米の開戦阻止を訴えた。高松宮が11月20日に軍令部第1部第1課に勤務するようになるが、鳥居氏によればこのような人事ができるのは海軍の上層部にしかおらず、山本五十六だったであろうと推測している。残念ながらこの会談は木戸内大臣によって意味の無いものにされている。 戦争の末期になって、皇室の中で戦争を早く終わらせればならないと考えられていたのは天皇の母親である皇太后であった。皇太后は疎開してほしいという天皇の要請を断固拒否されるのである。鳥居さんは皇太后のことを「男まさりの性格でめそめそと愚痴をこぼすことをしない」といい「山県有朋や西園寺公望といった元老は西太后のような睡蓮政治をおこなうことを恐れた」という。今NHKでやっている『篤姫』とあまりにも似ていると感じてしまった。 アメリカと日本の対立点は中国からの撤兵問題であり、東条英機は陸軍のトップであるからそれに反対であるのはある意味では仕方ないが(官僚制度の限界である)、内大臣である木戸幸一がそれに反対であったことは鳥居民氏には解せないことであり、結局は2.26事件にまで遡らなければならないという。 これらが今回の主なポイントである。鳥居民さんの本が近代史専攻の大学教授の本の脚注に登場することはほとんどない、それでも在野にとてつもない研究者がいるのが日本の江戸時代からの伝統なのである。
by masaya1967.7
| 2008-11-27 00:01
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