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前航空幕僚長田母神氏の防衛論。

 新年明けましておめでとうございます。今年一年は日本国内を含め世界は大激動を予感させてくれます。世界の動向を見極めながら日本がどのような行動をとれば良いのかを考えていきたいと思っています。今年もよろしくお願いします。

 さて、私は全航空幕僚長の田母神俊雄氏の論文内容にはあまり興味が無かったのですが、今月号の『諸君』でぼろくそに批判しているのを読んで、つい氏の本『自らの身は顧みず』を購入してしまいました。私が買ったのは第6刷でした。新聞には10万部突破と書いてあったのでこの種の本としてはかなり売れていると思います。

 彼の経歴は1948年福島県生まれで、防衛大学校電気工学科を卒業してから順調に航空幕僚長まで出世しています。(本人はパイロットになりたかったがなれたかったと書いていますが)戦前の軍人の上層部には東北出身者が多数いたが、彼もまた東北出身者であった。アメリカでも軍人の上層部には圧倒的に南部出身者が多いとどこかに書いてあったと記憶していますが、軍人の向き、不向きには地域性がかなり関係しているように思われる。ちなみに私の住んでいる関西はもっとも兵士に向いていないらしい。

 彼はこの本の中で、防衛力のもっとも大事な点はいかにして「抑止力」を高めるかにあるという。その観点から「専守防衛」に対して次のように述べている。

 「『専守防衛』は昭和30年ごろから国会答弁で登場するようになったが、公式文書に登場したのは昭和45年中曽根防衛長官の時の防衛白書の中であると言われている。そして専守防衛は防衛力に反対する勢力を納得させるのに都合が良かったのか、頻繁に使われる。そして軍事力を小さくとどめておきたい勢力からは『国是』などと呼ばれるようになってしまった。だが攻撃は最大の防御である。専守防衛では抑止力にならない。日本が絶対に先に手を出さないことがわかれば、相手は絶対に勝てる状況になるまで自分のペースで準備ができる。主導権は常に相手の手の中にある」

 この本の中にも書いていることですが、靖国参拝を中止してしまったのも中曽根首相の時代であった。中曽根康弘大勲位は戦後のマッカーサーの軍政にことごとく反対して、片岡鉄哉氏がよくこれで追放されなかったものだと『さらば吉田茂』で感嘆していました。しかしながら「専守防衛」や「靖国参拝」などの保守派にはとても大切な分野で保守を裏切っているのです。彼こそ日本の戦後を最も体現している政治家であろう。

 田母神氏は日本の核政策については次のように書いています。

 「私はアメリカの核を国内に持ち込むだけでは、効果は薄いと思っている。米国に逃げられないようにするため、NATOの一部の国がやっているニュークリア・シェアリングに踏み込む必要があると思う。これは米国の核兵器の発射ボタンを共有するものだ。つまり核を所有し配備しているのは米軍だが、ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー、トルコの5カ国は、NATOの枠組みの中で、米軍の核兵器を使って日常的に訓練をしている。これらの国が核恫喝を受けた場合にはアメリカはこれらの国に決められた核兵器を引き渡すというものである」

 この方法をオバマ政権に提案して果たしてアメリカは受け入れてくれるだろうか。米ソ冷戦が終わり日米ガイドラインが作られた頃から日米同盟の仮想敵はソ連から中国になっているのは間違いない。秋田浩之著『暗流』の中で、アジアでの米軍再編の意義は「中国軍の台頭に対抗することである。日本人があまり意識していないうちに日本は米国の『対中防波堤』戦略の欠かせない役者として舞台に立っているのである」と書いてあることからもそれは伺える。ところがヒラリー・クリントンやリチャード・ハースといったオバマ政権の外交を支える人たちは米中関係が最も大事な2国間関係と言っているから、中国が嫌がる日米のニュークリア・シェアリングに簡単に賛成するとは思えないのである。このように日米同盟は根本的な問題で空洞化しているのである。

 最後に田母神氏は今回の騒動を「浜田防衛大臣や現政権を(防衛相は)守ろうとしたのかもしれないが、結果として保守派国民の浜田離れ、自民党離れを引き起こし、与党の支持率を下げたような気がする。国民は今、保守派の政治家、保守派の政党を求めているのだ」と総括しています。彼の指摘は正しいでしょう。自民党は村山政権以来、権力を維持する為なら理念などは関係ないという態度をとってきました。一回下野して本来の存在理由を考え直してみるべきなのです。(民主党が政権をとっても現在の外交は治りませんが、日本のもう一つの問題点官僚内閣制は変えてくれると思っています)。

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by masaya1967.7 | 2009-01-03 03:14
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