親米保守派と核武装保守派

 親米保守派を定義してみたい。彼らは日本の安全保障にとって日米同盟が絶対に必要と考え、日本が集団的自衛権を行使すれば日米同盟はこれからも永遠に維持できると思っている人々。代表的な人物は岡崎久彦、田久保忠衛、古森義久、村田晃嗣など。

 日本は北朝鮮問題や中国問題を抱えているから、アメリカのイラク戦争支援を彼らは主張したのだが、アメリカは勝手に北朝鮮をテロ支援国家から解除してしまった。これに対して真摯な反省を見せたのは中西輝政だけだった。彼らは今度アメリカのアフガン支援に日本は協力しなければならないと主張している。識字率が23%の国に近代国家を作るらしい。

 一方、日本の安全保障は日米同盟だけでは不十分で最小限の核が必要だと考えている論者がいる。国際政治アナリストの伊藤貫は「日本はミニマム・ディタランスを持つべきだ。日米同盟を維持しつつ米国に対する依存度を低減し、同盟関係を多角化すべきだ」と述べている。この日米同盟+日本の核武装を主張しているのは、前出の伊藤貫以外にも兵頭二十八、中川八洋、元防衛官僚の太田述正や筆者が尊敬している故・片岡鉄哉がいる。

 筆者は核武装保守派の方にシンパシーを感じているのだが、この主張に全く問題が無いわけではない。というのも、筆者はアメリカ人が書いた文章で日本に核を持たせてより対等な同盟を結ぼうと呼びかけるものをみたことがないからである。もちろん日本の核武装を認めよというものは結構あるのだが、通常は次のような文脈で語られているのである。

Likewise, the United States would terminate the mutual security treaty with Japan and facilitate Japan's acquisition of whatever kind of military capabilities Tokyo decides that it needs to function as an independent great power, including a secure second-strike nuclear deterrent and power projection capabilities that would permit Japan to protect its trade routes and its territorial claims in the East and South China Seas. Christopher Layne "The Peace of Illusions"p187
(超簡単訳 アメリカは日米同盟を破棄して日本が必要と考える防衛力を持たせよ、それには第2撃核武装能力も含まれるのである)

 このようにアメリカが日本に核武装を勧めるのは日米同盟の破棄が伴っているのである。これは何故なのだろうか。ケネス・ウォルツ、ジョン・ミアシュハイマー、ダグ・バンドー、クリストファー・レインなどは現在のアメリカの覇権的な外交に批判的である。コストの割にはベネフィットが伴っていないと考えている。そこで彼らはバランス・オブ・パワーの外交を説くのである。ところがその為に日米同盟を切ってしまうと核武装していない日本は中国の属国になってしまう可能性がある。そうなれば全く意味がなくなるから日本の核武装を主張しているのである。

 ところが、日本の保守核武装論者は日本が核武装してアメリカと同盟を組んで「悪魔」の中国をやっつけようと考えている。現在Chimericaなどと言っているアメリカが日本のこのような核武装に乗ってくることはないだろう。現在日本が核武装を行えば、米中一緒になってつぶしにくるか、バランス・オブ・パワー論者のように日米同盟を破棄する可能性の方が多いと思われる。
[PR]
by masaya1967.7 | 2009-02-05 06:06
<< 日米同盟の限界 アルピニスト・野口健 >>