日本はGDPの160%、800兆円の借金を抱えている。これ以上借金を重ねると国家が破産すると主張する論者がいる。一方日本の長期金利(10年ものの国債の金利)は現在1.3%で世界最低である。なぜ破産しそうな国の金利が世界最低なのであろう。廣宮氏によれば政府の借金以上に日本の国民の資産が伸びているからである(1500兆円あるといわれている)。国家の借金が問題でなければ、日本経済の問題点とは何なのだろう。
それは「GDPが伸びないこと」と著者は書くのである。 名目GDP=政府支出+民間投資+民間消費+輸出-輸入 という式で表されるが、この中で日本の政府が直接コントロールできるのは政府支出であり、この本では政府支出がいかに大切かが強調されるのである。「GDPの成長には、国の借金と増加と政府支出の増加が付き物である。国の借金や政府支出は経済を発展させる為の積み木のようなものなのだ。この積み木がなければ経済発展は無い」と語り「小さな政府」を標榜したレーガンやサッチャー政権も決して政府支出を減らすことはなかったと主張するのである。 さらに国の借金もイタリアのように以前は日本より悪かったものの政府支出を拡大させ、それを呼び水に経済を拡大させ国の借金を減らしているのである。決して与謝野大臣の主張するように増税して健全な財政状態にしているのではないのだ。 廣宮氏は自説の有効性を調べる為に、徳川吉宗からジンバブエの経済まで調べて自分の理論の実効性を実証しようとしている。 もちろん彼の主張する「政府支出」は不必要な道路を造ったり、天下り官僚を跋扈させるものでは決して無い。彼は公務員を増加させる例をあげ、「近年業務が多様化して疲弊ぎみの小中学校の教員の補助業務、治安の悪化を食い止めるため町を巡回するような補助業務、食料自給率向上の為の農作業、景観保全や環境保護のための作業などなどをしてもらえれば、景気以上の価値をこの社会にもたらすことにつながる」と説いているのである。 廣宮説を私流に解釈すれば次のようになる。日本はバブルの崩壊時に企業が700兆円の借金を抱えることとなった。このため民間は借金の返済を優先した為に投資や消費があまり伸びなかった。そこで政府が多額の財政支出を行ったのは国家として正しい行為だったのだが、今度は国家が800兆円の借金を抱えるようになってしまった。日本の指導者は800兆という数字の絶対額におびえてしまい、もう借金はこれ以上できないと勝手に判断して「構造改革」に乗り出したのだが、「日本が政府支出の増加を抑制または減少に転じた90年代半ば以降は実質平均可処分所得はマイナス10%」にもなってしまったのである。 この本を読めば著者の説得性がなみなみのものでないかとがわかる。
by masaya1967.7
| 2009-02-15 23:30
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