アメリカの regime change

 1985年の「プラザ合意」以降、アメリカは日本に対して執拗に「市場開放」、「規制緩和」を求めてきたが、その理由を下村博士は次のように述べている。

 「ところで私は、アメリカ政府が自由貿易主義を金科玉条にする背後には多国籍企業の論理が存在すると考える。
 多国籍企業というのは国民経済の利点については全く考えない。どころか、アメリカの経済思想には多国籍企業の思想が強く反映しているため、どうしても国民経済を無視しがちになってしまう。
 では多国籍企業はどのような考え方をするのか。単純に言えば勝手気ままにやらせてくれ、ということである。そして、こういう考え方がアメリカ政府や産業界を支配しているため、国民経済からいえば不都合なことでも、アメリカの声として日本にもちこまれる。」『日本は悪くない』 105頁

 これと同じことをアメリカのクリストファー・レーンという学者が The Peace of Illusions という本の中で書いています。

 「アメリカが覇権的な外交を行う理由は、それがアメリカの支配層の利益と合致しているからである。現在のエリートはトーマス・ファーガソンが multinational liberalism とよぶもので、これは1930年代の後半ニューディール政策の結果生まれたものである。この中心にあるのは資本集約的な多国籍企業や投資銀行などで、これらのグループが以前の1896年システムと呼ばれる経済的ナショナリズムを体現した労働集約産業中心の体制にとってかわったのである」

 ビル・トッテンさんがアメリカの財務長官にポールソンやルービンなどのゴールドマン・サックス出身のものがなることは、日本でいえば野村証券などの社長が財務長官になるなることと同じで、どう考えても異様であると書いていましたが、この体制はニューディールの結果できたのです。

 さて、今回の不況が「V」字回復すればこの体制はこれからも続くのでしょうが、「L」字回復のように日本の「失われた10年」みたいになったら、アメリカの体制に変化がでてくる可能性があります。先週のニューズ・ウィークにバートン・ビッグスというヘッジファンドの経営者が次のように書いていました。

 「最も尊敬されているエコノミストやストラテジスト達は現在の今回の不況は長く、深く、世界的なものになると予測している。最も厳しいものは、この不況が悪くて大恐慌、よくて日本の失われた十年になると予想している。」

 「日本の教訓は財政刺激だけではうまくいかないということである。銀行救済策がこれからの経済の運命を決めるだろう。悪い銀行は国有化を行い、それを早急にやらなければ、われわれも失われた十年になるかもしれないし、さらに20%株価が下がるだろう」

 この不況が彼らの主張するように長いものになれば、現在のアメリカを支配している multinational liberalism 体制は変わらざるをえないだろう。そうなれば必然的にアメリカの外交も現在の覇権的なものが変わってくるのである。
 
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by masaya1967.7 | 2009-03-09 15:49
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