最強の軍隊


 戦争関係の本を読んでいたら、たまに「日本の兵・下士官、ドイツの将校、アメリカの将軍を組み合わせたら最強の軍隊ができる」、との説にでくわすことがある。この命題は正しいのだろうか。

 ここではこの説を考えるにあたり、この説を経済に応用して考えてみたい。戦争も経済も個人で行うよりも組織で行うものであり、戦争や経済で「強い」という意味はいかにその組織が「効率的」に運用できているかを問うものである。経済の効率性は単位時間にいくら生産できるかをはかる「生産性」で表すことが出来る。

 日本が戦後、経済で急成長した背景には、製造業での急激な生産性上昇があったからである。代表的なのはトヨタ自動車の「カイゼン」だったり、家電業界のTQC(トータル・クオリティー・コントロール)などであった。

 ここでの問題はトヨタのカイゼンは誰の能力を活用しているか、である。これはどう考えても末端の労働者である。家電製品のクオリティー・コントロールの方も一般の労働者である。こう考えると日本の経済の生産性上昇には一般労働者の優秀な能力が欠かせなかった。これは日本の兵隊や下士官が優秀だったとする説と共通するものがあると思う。

 同じようにドイツ経済が効率的なのは、マイスター制度などによるドイツ人の中間層の能力が高い為で、これはドイツ人将校の能力の高さととらえることができる。アメリカの場合はエリートの能力が高い為で、経済も軍事も現在世界のナンバー・ワンでいられるのである。

 一般日本人の能力、ドイツ人の中間、アメリカ人のトップそれぞれの能力が高いのはやはり教育制度のたまものであろう。日本の寺子屋からはじまる初等教育、ドイツのマイスター、アメリカの高等教育、これらが能力開発の源泉になっているのである。おそらくこれら全てを組み合わせたら世界最強の国家ができあがるであろう。

 このように考えると、日本の兵・下士官、ドイツの将校、アメリカの将軍を組み合わせたら最強の軍隊が出来上がるという説は、まんざら嘘でもないのである。

 日本の「官僚」は自分たちの能力が高いと考えがちだが、それは大間違いである。第2次世界大戦でも明らかになったように、日本のエリートはアメリカのそれと比べて劣っているから、戦争に負けたのである。いくら下が優秀でも上が無能であれば戦争に勝てないのである。経済でもいまみたように、生産性上昇に寄与したのは一般労働者の能力であり、官僚は全く関係がなかったのである。

 最後にこの説を使って「中国大国論」を検証してみたい。中国には日本のようにしっかりした一般労働者が多数存在するのだろうか?ドイツのように優秀な中間層がいるのだろうか?アメリカのように優秀なエリートがいるか?どの質問に対してもイエスと答えるのは難しいと思われる。現在の中国大国論はやはり幻想の部分が多いのである。

 
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by masaya1967.7 | 2009-04-07 18:40
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