何故「自由」なイラクを目指したアメリカのイラク戦争は「アブ・グレイブ」化してしまったのでしょうか。エマニュエル・トッドの『帝国以後』に興味深い記述があります。 「アメリカのケースは、普遍主義と差異主義という対立競合する2つの原理に対するアングロ・サクソンの2面性を極端かつ病的な形で表現している。アメリカ合衆国はまずは徹底的普遍主義の民族的・国家的成果として記述することができる。何はともあれアメリカ合衆国というのはヨーロッパの全ての民族から供給された移民の融合から生まれた社会である。当初のイングランド人からなる中核は、様々に異なる民族的出自の個人を吸収する能力が完璧にあることを示した。1920年代後半に中断した移民流入は、60年代に再開したが、今度はアジアと中南米まで範囲を広げることとなった。統合する能力、中心核を拡大する能力こそがアメリカの成功の秘訣であり、アメリカ合衆国の先行きにおける帝国としての成功はこれにかかっているのである。2001年には2億8500万人で2025年には3億4600万人と予想される人口量だけでも、この能力の証明となっている」 トッドの言葉を私流に解釈すれば、アメリカが掲げる「自由民主」主義は雑多な民族を一つにまとめあげる接着剤の役割を果たしているのである。一方負の側面としてトッドは次のように指摘しています。 「しかしアメリカ合衆国はまた、これとは反対の根底的な差異主義という用語でも描写することが出来る。アメリカ合衆国の歴史には常に他者というものが存在した。異なるもの、同化しないもの、殲滅か、大抵の場合、隔離を宣告されたものである。インディアンと黒人がこの異なる人間の役割を演じてきたし、黒人の場合は今日でも演じ続けており、インディアンの場合は、ヒスパニックに形を変えて演じ続けている。アメリカのイデオロギーシステムは、普遍主義と差異主義を組み合わせて一個の総体としているのである。」 このようにアメリカの掲げる普遍主義の裏にはいつも「人種主義」という悪魔が潜んでいるのです。イラク戦争も本来はサダムフセインの圧政からイラク人を開放して「自由」をもたらすことが目的でしたが、それに反対する人々はアメリカの「人種主義」によって辱められるのでした。アブ・グレイブがそれを示しているのです。
by masaya1967.7
| 2009-06-20 11:43
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