カテゴリ:国際政治( 23 )

三国同盟について 4

 最後に、三宅正樹氏の『スターリン、ヒトラーと日ソ独伊連合構想』について二つのことを書いて終わりにしたい。

 三宅氏が『日独伊三国同盟の研究』を書かれてから30年の年月がたち、何故に一般向けに今回出版されたかについてである。私が外交史などに興味をもち、読み始めた本は、故高坂正嶤氏や岡崎久彦氏または北岡伸一氏などのいわゆる「親米保守」派たちの本が圧倒的に多かった。彼らの本の中では三国同盟が4カ国同盟を作ろうとしたものだったという解釈は、ほとんど無かったと思う。あったとしても簡単に触れていただけだった。松岡洋右について三宅氏は次のように書いている。

 「松岡は南部仏印進駐が日米戦争を触発することを見抜いたけれども、彼の独善的な態度は、その失脚につながった。しかし独ソ戦勃発以後の事態は、本書がこの時期の歴史をたどる上での軸としてきた日ソ独伊四国連合構想が、独ソ戦勃発によって完全に死滅した後のことであり、日米交渉を含めて、本書とは別の軸によって考察すべきものであろう。」(239頁)

松岡に対して親米保守の歴史家の評価が辛くなるのは彼らには松岡を判断する基軸に「日米関係」しか持てなかったからであった。おそらくそのような基軸しか持てなかったのは「米ソ冷戦」のせいであった。「米ソ冷戦」の最中に松岡の4国連合構想を評価する論説が堂々とまかりとおっていたら危険だという判断が歴史家に働いていたとしても不思議ではない。冷戦中は三宅氏のような歴史家は政治的に「危険」だったのである。しかし冷戦が終わり、アメリカ批判も日本ではタブーで無くなってきた。その結果三宅氏の30年早すぎた研究が一般に日の目をみることになったのである。

 最後にひとことだけ。三宅氏は4国同盟構想を現代に敷衍して「後藤新平が『新旧大陸対峙論』で主張したような、ロシアを中心とするユーラシア大陸のブロックに日本も参加して、新大陸の米国を牽制するという構想は、現在ではもはや問題にならないであろう。」(253頁)言っている。

 しかしながらフランスの批評家エマニュエル・トッドは『帝国以後』で次のように述べている。

 「アメリカは一方的な行動によってヨーロッパの同盟国をなおざりにして、その面目をつぶし、己の勢力の本質的な道具であるNATOをなりいきまかせにしている。また日本を軽蔑しており、世界一効率的で、アメリカの安寧に必要不可欠な日本経済は遅れた経済として絶えず決めつけられている。さらには中国をあきもせずいつも挑発し続け、イランを悪の枢軸の一員にしてしまう。まるでアメリカはいずれもアメリカの不規則な行動に振り回されて苛立つ極めて多様な国々からなるユーラシア同盟を作っているようだ」(185頁)

 日本はアメリカに対してある種の「トラウマ」を抱えている。近代文明を作ったヨーロッパも同じものを抱えているだろう。冷戦に敗れたロシアもアメリカには複雑な気持ちを抱いている。中国もいずれはアメリカによって共産党を崩壊させられるから、アメリカに対してよい感情だけを持つことにはならないであろう。

 このようなアメリカに対して複雑な感情を持つ国々に対して、アメリカはそのような感情を理解しながら国際社会をリードする能力を持っているのだろうか。私はトッドと同じく否定的である。現在では不可能だが何十年後の遠い将来4国連合構想は日本の外交になんらかの役割を持つような気がする。
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by masaya1967.7 | 2007-02-23 00:59 | 国際政治

三国同盟について 3

 三国同盟をソビエトを加えて、4カ国同盟にするという構想はヒトラーのソビエト侵攻によって最終的に崩壊した。そこで何故日本はその時に三国同盟を反古にしなかったのだろうか。近衛首相は次のように証言している。

 「余は当時三国同盟の理由及至経過に鑑み、本条約を御破算にすることが当然なのではなかろうかと軍部大臣とも懇談したことであった。しかしながらドイツ軍部を信頼すること厚き陸軍はとうていかかる説に耳を傾けようとはしなかった。」(235頁)

 2回裏切られてもついていこうとするのは旧帝国陸軍はドイツの『ポチ』になり果ててしまっていたのである。一方松岡洋右はドイツのソビエト侵攻を聞くなり、自分が結んできたソ連との中立条約を忘れてしまったかのようにソビエトに日本も侵攻しろと天皇に上奏するのである。

 もしこの時の松岡案がとられていたらどうなっていただろうか。兵頭二十八氏は『日本の海軍兵備再考』で「1941年の関特演がもし対ソ戦に移行していれば、それは、ドイツ軍との東西挟撃になった。この場合おそらくソ連はウラルの『内国聖域』を維持できず、主権者スターリンは屈服したであろう」と書いている。もしそうなれば同時に日中戦争も日本の勝利に終わっていたであろう。

 三国同盟から四カ国同盟に失敗した時点で、日本は同盟を破棄することもなくまたソビエトに侵攻することもせず、何をしたのかと言えば南部仏印に進駐してしまったのである。日本が南部仏印を選んだ理由は鳥居民氏によれば海軍が陸軍のソビエト侵攻を恐れ陸軍を南へ目を向けようと考え、陸軍は陸軍でノモンハンでのソビエトに対する恐怖がぬぐえず、海軍の意図にこれ幸いとのってしまったのが真相だと言う。

 結局日本が三国同盟を結んだのは間違いではなく、4カ国同盟が失敗した時点でもう少しましな解決が出来なかったのかが最大の疑問であろう。

 続く
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by masaya1967.7 | 2007-02-22 00:37 | 国際政治

日高義樹氏曰く安倍首相は絶対に靖国には行きません。

 今日、日高義樹氏とキッシンジャーの対談を見ていたら、日高氏が安倍総理は中国で首相在任中靖国に参拝しないと約束したそうである。本当かどうか分からなかったのだが、そういえば思い当たることがある。

 『朝鮮日報』で安倍総理に近いと言われている中西輝政京都大教授が安倍総理は靖国に行かないと語っていたのである。中西氏は小泉首相在任中強硬に靖国参拝を主張し片岡鉄哉氏から「靖国特攻」と言われていたのである。中西氏はいつから態度が変わったのだろうか。

 結局安倍首相は最初から麻雀でいうところのベタ降りしていたのである。ショック!
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by masaya1967.7 | 2007-01-07 17:30 | 国際政治

中国が北朝鮮の核排除に真剣にならない理由

 中国が北朝鮮の核を取り除くことに真剣にならない理由は次のようなメカニズムが働いているのではないか。

 1 北朝鮮の核武装が日本の核武装を誘発することを中国が内心恐れていることはキッシンジャーのいうとおり間違いないだろう。そこで日本の政府当局者が日本の核保有議論を行うことは中国を北朝鮮問題に真剣に取り組ませる契機になるであろう。

 2 ところが日本の核論議に敏感に反応したのは中国ではなくアメリカであった。ライス国務長官が日本に飛んできて大声で日本の安全保障をfull range, full rangeで行うと言明して帰ってしまった。

 3 そんなわけで中国の心配の種をアメリカが除去してしまったのだから、中国が北朝鮮に対して真剣に行動する訳が無いのである。

 このようなメカニズムが働いていく限り北朝鮮の核問題はずるずる続いていくのである。
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by masaya1967.7 | 2007-01-03 22:49 | 国際政治

ギ・ソルマン 2

 ギ・ソルマン氏が中央日報に語った、中朝関係に関すること、「統一に対しては2つの場合を考えることができる。思ったより長くかかることもあり得るし、急に訪れることもあり得るという話だ。ただ太陽政策の結果として統一は訪れないだろう。統一は中国が北朝鮮を忘れた瞬間にやってくる。中国が果たして北朝鮮を捨てることができるか。中国の体制がある日変わったら可能なことだ」と述べているのはパーフェクトだと思う。

 しかし、日本に関することでは疑問に思う箇所がある。日本は朝鮮半島の統一を恐れているのだろうか。朝鮮半島が独立を保っていく限り全然恐れる必要は無いと思う。拉致被害者のことを考えれば、早く北朝鮮が滅亡してくれることを祈るばかりである。しかし戦争を起こしてでも北朝鮮を崩壊さすべきかまでは考えていない。アメリカがイラク戦争みたいなことを北朝鮮に対して行うのではないかとの一抹の不安を多くの日本人は抱いていると思う。
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by masaya1967.7 | 2007-01-02 23:41 | 国際政治

再びのファン・ジャンヨプ

 『朝鮮日報』にファン・ジャンヨプ氏の言葉が掲載されていたのでここに記します。

 「ファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党秘書は20日、ソウル市内の明知大学で開催された「北朝鮮人権・民主化過程での大学生の役割」をテーマとしたワークショップで、「核兵器よりも危険なのは親北反米勢力」と主張した。

 北朝鮮人権青年学生連帯の主催で開催された講演で同氏は「金正日政権を除去しなければ北朝鮮の問題は解決できない。金正日が信じているのは二つだ。一つは中国との同盟でもう一つは韓国の親北反米勢力」と語った。

 同氏は「親北勢力が韓国政府を親北反米政権に変えてしまい、北朝鮮が彼らに連邦制を宣布させ、米国の干渉を受けずに赤化統一を実現しようとしている」と主張した。また「分別のない人間が政権をとることを防がなければならない。金正日とは協力してはならない。南北首脳会談を語る者ではなく、公明正大な人物を選ばなければならない」と述べた。

 同氏は「来年が重要だ。大統領選挙でまずは親北反米勢力を抑えて政権を取り戻し、民主主義を強化しなければならない」と語った。 」
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by masaya1967.7 | 2006-12-21 12:30 | 国際政治

クーデター

 タイでクーデターが起こったとき、私の脳を一瞬かすめたのは韓国でクーデターは起こらないのだろうかという疑問だった。イ・ジョンシク氏が書いた『愚かな韓国人に鉄槌を』にノ・ムヒョン政権に対する軍人たちの不満が縷々述べられていたからだ。

 アメリカでは韓国に対する不満は相当たまってるとみて『朝鮮日報』などではアメリカが韓国を「いわゆる同盟国」と呼んでいると嘆いていた。

 もし韓国で米韓同盟の崩壊に危機感をもって軍人がクーデターを起こせば、一体アメリカはどうするのだろうか。
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by masaya1967.7 | 2006-11-24 00:12 | 国際政治

キッシンジャーの6カ国協議論

 昨日の『読売新聞』でヘンリー・キッシンジャーが柄にも無く妙に明るい文章を書いているので批評してみたい。

 「もし6カ国協議が失敗し、北朝鮮の核計画が続くなら日本の最後の手段は自前の核兵器の開発である。交渉の進展の鍵を握るのは米中の協力である。」

 アメリカはCIAの報告書が示したように北朝鮮が短期的に崩壊するものだと仮定し、北朝鮮との合意をまじめに遂行してこなかった(吉田康彦氏がいつも強調すること)。さらにレジーム・チェンジ(体制転換)の模範例になるはずのイラクがぼろぼろになって現在あるがままの北朝鮮と交渉せざるをえないところに追い込まれた。

 一方中国もこれまで北朝鮮に対して圧力を用いるのを嫌がっていたのだが、日本の核武装という悪夢におびえたのか北に圧力をかけて6カ国協議に引っぱりだしてきた。そこで中国がこのままの政策を続けてくれるなら、北朝鮮の核放棄に成功するかもしれない。

 そこでキッシンジャーは「いまや成功は手の届くところにあるように見える」と書いたのである。

 この論理の問題点は果たして中国がこれまでの「北の崩壊を防ぐ」という政策を転換させ、北朝鮮の核放棄を最優先課題に持ってきたかということにある。中国が今回北朝鮮に何らかの圧力をかけたことを私は否定しない。しかし北朝鮮の良心であったファン・ジャンヨプ氏が核実験の翌日に『スーパー・モーニング』で北は6カ国協議に強い立場で戻ってくると予測したことを無視することはできない。北朝鮮もこれ以上国際社会を無視すると体制がもたないと思ったのかもしれない。いずれにせよ中国が政策を転換したというのはキッシンジャーの過大評価である。

 もしキッシンジャーの予測通りに米中の協調で北の核問題が解決したら、もっとも悲惨な状態に陥るのは日本であることは間違いない。東アジアの秩序が米中の協調で解決するのであれば日本の9条改憲は全く必要なくなるし、米中の決めたことにお金を払うだけの永遠のシビリアン・パワーになってしまうのである。片岡鉄哉氏が長年警告してきた「米中排撃」論の完成である。

 中国にとっても「北朝鮮の存続」よりも東アジアの「米中協調」の方が長い目で見たら中国の国益にかなうはずである。しかしながら歴史には短期的な国益にこだわったあげく長期的な国益を失ってきたことがいかに多かったか。戦前日本が唯一こだわったのが「支那からの撤兵」であった。その結果アメリカと戦争となり、満州も台湾も朝鮮も失ってしまったのである。

 おそらく中国も北朝鮮をとって「米中協調」を捨ててしまうだろう。後に後悔しても遅いのである。
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by masaya1967.7 | 2006-11-21 22:14 | 国際政治

論理(仮説)と前提条件

 もう少しわかりやすく論理(仮説)と前提条件の関係を説明しようと思う。いつだったか『朝まで生テレビ』で東大のカン・サンジュン教授が仮に日本と北朝鮮が国交を結べば「拉致被害者はきっと全員帰ってくるだろう」と述べたことがある。

 ところが中川八洋筑波大学教授の本には、「日本と北朝鮮が国交を結んだら金正日は拉致被害者を全員殺すだろう」と書いてあった。

 「日本と北朝鮮が国交回復したら」という同じ仮説を用いているにもかかわらず、カン氏と中川氏では180度反対の結論がでている。このような結果になるのは二人の学者の前提条件が全く違うからである。中川氏は金正日が異常な「人格」の持ち主であるとして論理を展開している。一方カン氏は同じ朝鮮民族であるからなのだろうか金正日を普通の「人格」ととらえているから、拉致被害者が全員帰国できるなどと答えるのである。

 私は、中川教授のようにいいきる自信は無いが、カン氏のいうようにはならないと断言できる。拉致を簡単に命じるような人間は普通の「人格」を持っているとは到底思えないからである。
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by masaya1967.7 | 2006-11-21 00:21 | 国際政治

グレゴリー・クラークを論破する。

 「関係正常化なくしては、北朝鮮政府としては、自国が依然として敵国リストに入れられておりいつ攻撃されるか分らないという判断に立たざるを得ない。少なくとも核とロケットの準備があることを何らかの形で見せないと攻撃されやすい。原因と結果のこの論理が、日本人と日本のメディアにはほとんど何の印象も与えていない。」

 この文章はグレゴリー・クラーク(元オーストラリア外交官)がジャパン・タイムズ紙に書いたものの一部である。本当に北朝鮮と日本やアメリカが国交正常化したら金正日は核を放棄するのだろうか。 彼のサイトではクラーク氏が今まで書いてきた論文が掲示してあったので少し読んでみた。彼の言いたいことは次の一文で簡潔にあらわすことが出来る。

 「日本という国は論理より感情が優勢な部族社会である。」

 だから北朝鮮のミサイル発射なども日本人は感情的にしか行動することが出来ないのだと氏はみているのである。

 クラーク氏の間違いは論理と感情が簡単に分離できると考えるところである。物事を論理的に考える為にはなにがしかの前提条件を置かなければならない。数学の場合は皆が正しいと思える「公理」が出発点となると藤原正彦氏は述べている。ところが人間社会の場合、なかなか皆が納得して賛成する前提条件など存在しないであろう。そこで藤原氏は日本が歴史的に培ってきた「慣習」を大切にしなければならないと言われるのである。西部邁氏は「安定した感情」が前提条件にならなければならないと同じようなことを主張している。

 さて、国交正常化すれば北は核やミサイルを放棄するというクラーク氏が考え、吉田康彦やカン・サンジュンがきっと賛成する政策にも暗黙の了解で前提条件が潜んでいる。それは「金正日も日本やアメリカの指導者と同じように行動するはずだ」という考えである。拉致を指導し、罪亡き人を簡単に強制収容所送りにする暴君を普通の指導者と考える前提条件に間違いは無いのだろうか。

 前提条件が間違っていればいくら「論理」が正しくともとんでもない結論にしか至らないのである。

 一部族の反論でした。
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by masaya1967.7 | 2006-11-20 00:26 | 国際政治