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『「反日・親北」韓国の暴走」を読んで


 今回は呉善花さんの新作『「反日・親北」韓国の暴走』を読んだのでその感想を書いてみたい。

 呉善花さんの著作活動はおよそ3種類に区分けできると思う。最初は彼女のデビュー作となった『スカートの風』に代表される日韓比較文化ものであり、次ぎにくるのが山本七平賞を受賞した『攘夷の韓国 開国の日本』などの古代ものである。そして最後に区分されるのが今回の『「反日・親北」韓国の暴走』に代表される政治・近現代史ものである。

 この中で私が特に好むものは今回のような政治や近現代史を描いたものである。理由は彼女が持っている非常に研ぎすまされたパワー(権力、勢力)を認識する感覚にある。

 例を挙げてみよう。彼女が韓国が日本の植民地になることなく自主独立の道があったとすれば、それは金玉均らによる甲申政変の時点と彼らを引き継いだ開化派の残党が甲午改革を自主的に推進していた場合に限られると主張した。(『韓国併合への道』)そのなかで特に金玉均を高く評価した。金が日本の力を借りて改革を行うことは矛盾ではないかと問うと次のように反論するのである。

 「当時の日本の力は強すぎもしないし弱すぎもしない、だからこそ力を借りる意義があった。日本の力が強大なものであれば、力を借りることは、そのまま支配下に入ることに他ならなかったからである」。(『韓国併合への道』120頁)

 このようなパワーに対する鋭い認識があるから、彼女が書く歴史のイフは非常な説得性を持つのである。そこで今回の『「反日・親北」韓国の暴走』にもどれば、現在の韓国の大統領ノ・ムヒョンは次のような就任演説を行っている。

 「韓半島は東北アジアの中心に位置しています。韓半島は中国と日本、大陸と海洋を繋ぐ橋です。このような地政学的位置が、過去には私たちに苦痛を与えました。しかし、今日はかえって機会を与えています。21世紀、東北アジア時代の中心的役割を私たちに要求しているのです」。

 そして、ノ・ムヒョン大統領は東北アジアの中心的国家となるために北朝鮮を融和し将来の連邦性国家を目指しているらしいのである。

 果たしてノ・ムヒョンの政策に現実味があるのだろうか。北朝鮮のような破綻した国家を抱えて東北アジアの中心となることはできるのだろうか。2005年6月号の雑誌『諸君』において渡部昇一教授は「明治期あたりからの歴史を読むと、韓国というのは世の中にこんな愚かな国民はあるのか、という感にうたれますね」と述べているが、明治期だけではないのかもしれない。

 もちろん呉善花さんは現在の韓国の政策には否定的である。彼女は北朝鮮地域をいわゆる「特別行政区」とする吸収統一を目指すため、国連の安保理にかけて北朝鮮に経済封鎖を行い、核兵器を放棄させるべきだと説いている。

 しかし、彼女のような常識的な意見は現在の韓国においては全くお呼びでない。完全に非国民扱いである。韓国は将来北朝鮮が崩壊した時にそれを養う力はないのだからそれに備えるためにも日米に近づくべきなのである。さらに言えば現在の日本にたよることは金玉均が日本を利用した時に通じるものがある。現在の日本の力は強すぎもしないし弱すぎもしないそれだからこそ頼りがいがあるのである。しかし韓国は中国と一緒になって日本を批判している。

 金玉均はクーデターに失敗し祖国がおかしくなっていくことを日本でみなくてはならなかった。呉善花さんも全く同じ立場になっているのではないか。
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by masaya1967.7 | 2005-05-15 20:57

チャールズ・カプチャンとエマニュエル・トッド その2


  ヨーロッパの自立という問題を考える上でイギリスの役割を考えなくてはならない。というのもイギリスはこれまでの歴史においてヨーロッパの大陸を単一のパワーが統一するのを防ぐというバランス・オブ・パワーという戦略をとっていたからである。そこでイギリスがアメリカとヨーロッパの間でバランサーの役割を果たすことになったら、強力なヨーロッパ独自の政策を遂行することを阻害してしまう。

 カプチャンは現在の大西洋同盟の状態を次のように述べる。

 『豊かで平和な、アメリカのリードにもはや従おうとしないヨーロッパに対して、アメリカはその保護者としての関心を失いつつある。また、中東や東アジアでの差し迫った危機のため、すでにアメリカの資源はそちらに向けられてしまっており、好むと好まざるとにかかわらず、ヨーロッパはますます自立しつつある。……フランスとドイツはこのことをよく理解しており、それが防衛協力の強化を彼らが進めようとしている大きな理由の一つである。イギリスは、アメリカとヨーロッパの架け橋という役割にいまだに執着し続けているが、EUの主導的なメンバーになった方が、アメリカという巨人の後をついてまわっているよりも大きな影響力を行使できるということにすぐに気づくだろう』。

 トッドも同じようなことを述べている。

 『アメリカ合衆国に好きなようにイギリスを振り回させておけばよいのだ。イギリスは自ずと何らかの形の倦怠に囚われ、外交的軍事的にうんざりしてしまい、自らのヨーロッパ人としてのアイデンティティの自覚に立ち至るだろう。アメリカエリートたちのヨーロッパ嫌いは、イギリスだけをおめこぼししてくれはしないだろう。実はアメリカ合衆国にとって彼らの真の出身地であるイングランドこそは、ヨーロッパなるものの神髄をなしているのである』。

 彼らがイギリスが将来ヨーロッパよりに外交政策を転換させるようになると予想する背景にはイギリスとヨーロッパ大陸との貿易量がアメリカとの貿易量と比べて3.5倍にもなるという事実が存在する。これに対して日本は中国との貿易がアメリカとの貿易を抜いたとはいえ、アメリカを無視することは貿易政策的にはできないのである。基本的にイギリスを含めたヨーロッパは自給自足が可能なのである。

 次に続く。
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by masaya1967.7 | 2005-05-07 18:33

中国の反日について

 今週のニューズウイークに中国関係の記事が載っていたのでそれについてコメントしてみたい。著者はファーリード・ザカリアという人でFrom Wealth to Power やThe Future of Freedomといった本を書いており、アメリカを代表する若手の政治評論家であり、ABCのThis Weekなどにも登場している。(名前からわかるかもしれないが彼はインド系である)

 But for China, emotion seems get in the way. Having abondoned communism, the Communist Party has been using nationalism as the glue that keeps China together.

1989年の天安門事件以来、江沢民共産党政府は共産主義の無効性を悟り1994年に彼は「愛国主義教育実施要項」を作りナショナリズムをもって共産党政府の正当性を国民に認めさせようとした。この間の説明は鳥居民氏の『「反日」でいきのびる中国』という名著に詳しく書かれている。

 And modern Chinese nationalism is defined in large part by its hostility toward Japan. Mao is still a hero in China despite his many catastrophic policies because he unified the country and fought the Japanese.

江沢民の政策は日本からしてみれば残念なことに非常な成功を収めてしまった。その結果がサッカーのアジアカップであったし、今回の多数の都市で発生した反日デモであった。

 And as China advances economically, Chinese nationalism only gets more intense. Scratch a Shanghai Yuppie and you will find a virluent nationalist -on Taiwan, Japan and America.

これからの問題はこのように高められた中国のナショナリズムを共産党政府は効果的に制御していくことができるのだろうか。ザカリアは

 Beijing assumes it can handle popular sentiments but it might well be wrong.

といっている。そういえば同じようなことを産經新聞の中国総局長伊藤正氏は共産党内の事情に詳しい中国筋の話として次のようなことを『正論』2005年6月号に載せている。

 「中国は今、経済発展の半面で矛盾の坩堝にある。あらゆる地域、分野で格差は広がり、腐敗の蔓延に歯止めはかからない。現在の矛盾状況は、国民党時代よりもずっと深刻であり、大暴動や革命がおこっても不思議ではないほど階級分化と階級間の利害対立が進行している。これは一党独裁下での市場経済化、つまり資本主義化がもたらした矛盾であり、その矛盾を解決するには西側の民主制度への移行しかないとの主張が再燃した。しかし胡キントウの一党独裁堅持への決意は固い。ではどう党への求心力を保ち、政権維持の合法性を主張するのか。当面の対策は、江沢民時代の愛国主義の高揚しかない」

 中国共産党政府は滅亡の道へ邁進しているのではないだろうか。
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by masaya1967.7 | 2005-05-07 07:40

チャールズ・カプチャンとエマニュエル・トッド その1


 21世紀の世界はどのようなものになるか考える上で参考になる本を2冊紹介したい。これらの本はいずれもアメリカのイラク侵攻以前に書かれているが、事態の推移をこれ以上の正確さで予測した本を私は知らない。それだけでも読むに値するであろう。

 1冊めはアメリカの知識人チャールズ・カプチャンの『アメリカ時代の終わり』(NHK出版)であり、もう一冊はフランスの知識人エマニュエル・トッドが書いた『帝国以後』(藤原書店)である。これら2冊の本はヨーロッパの自立を強調することで共通している。

 最初にアメリカのイラク戦争について、カプチャンは次のように書いている。

 『イラク戦争を巡る外交的な孤立は、アメリカをヨーロッパの大半の国々から、実際には、世界のほとんどの国々から分断させた広い亀裂の、原因ではなく、現象であった。9・11テロが残した脆弱性の意識と怒りがアメリカの単独行動主義を助長し、それが国際社会の構造にひびを入れている』。

 一方トッドは、『10年以上に及ぶ経済封鎖で疲弊した、人口2300万の低開発国イラクに世界一の大国アメリカ合衆国が仕掛けた侵攻戦争は、「演劇的小規模軍事行動主義」のこの上ない具体例に他ならない。メディアを通して華々しい戦闘が展開するだろうが、これによって根本的な現実、すなわち選ばれた敵のサイズがアメリカの国力を規定しているという現実が覆い隠されるようなことがあってはならない』と書いている。

 アメリカがイラク戦争をまさに始めようとする時、フランスは激しく反対した。シラク大統領の頭にはトッドの議論があったらしいのである。そのとき日本の政治家はサンデー・プロジェクトにおいてフランスは歴史上いつも勝ち組の方についてきたので今回も土壇場で折れるのではないかと予想していたが見事に外した訳である。

 ところでトッドは日本がアメリカのイラク戦争に参加した理由を次のように書いている。

  『日本政府がアメリカの行動を受け入れた理由は、日本の地政学的孤立によって大方説明がつく。ドイツはヨーロッパの中に包含され、一応は核武装大国であるフランスと手を結んでいるため、非常に弱体化したロシアと協調することができ、戦略的犠牲をあまり払うことなしに、アメリカの統制を逃れることができる。日本の方は、北朝鮮問題と、アメリカ合衆国に替わる地域同盟者がいないことを考慮しなくてはならない』
  と日本の状態を描いているが、これ以上の日本のジレンマを簡潔に書いた文章があっただろうか。

   次に続く。
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by masaya1967.7 | 2005-05-06 06:54