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『中国動漫画新人類』を読む。

 遠藤誉女史が書いた『中国動漫画新人類』を読んだ。この本は日本のアニメや漫画が海賊版の形で中国に普及しそれが将来中国の政治にどのような影響をもたらすかを考察している。

 この本の中で新たな知見を得たので、そのことについて考察してみたい。まずは中国の「反日」について。中国で天安門事件の後始まった愛国主義教育は「崇洋媚外」(西洋を崇拝して外国に媚びること)を戒める目的で始まった。天安門で民主主義の要求を武力で踏みにじったのだからこのことは当然である。

 ところが江沢民は、1995年の「世界反ファシズム戦争勝利50周年記念大会」で必死に発言を求め、これより中国共産党が日本との戦いに勝ったことを強調していったのだという。その結果89年の天安門事件のときに最大に警戒すべき「敵対勢力」だったはずのアメリカにひざまずくという大転換を見せるのであった。

 「そして95年以降は愛国主義教育基地もつぎつぎと建設されて小学生からの徹底した教育に使われ、歌も踊りも読書も映像もすべて、「抗日戦争」を中心とした愛国主義一色に塗り上げられ青少年の反日感情醸成に貢献することになる」320頁。

 さらに反日デモにおいても産經新聞の古森記者などは裏側で中国が操っていたという記事を書いていたと思うが、彼女によればそれは間違いだと言う。2005年2月28日に史維会というアメリカにある中国系の団体は日本が国連安全保障理事会の常任理事国に候補として上がっていることを示唆した当時の国連のコフィー・アナン事務総長に対して、日本の安保常任理事国入りの反対の署名を提出しようとネット上で署名サイトを立ち上げた。それに対して反日教育を受けた中国国内の人々が共鳴してしまったのである。この署名を求めた史維会という団体は天安門事件で犠牲になった人々を擁護してきた団体であったにも関わらず。

 「アメリカにおけるこうした動きの裏には中国政府がいるのではー少なくない日本人がそんな思いを抱くかもしれない。けれどもこれまで記したとおり、中国政府とは間違いなく無関係ある。むしろ在米華僑を中心とする「人道主義」運動から巻き起こった現象なのだ。」352頁

 このようにこの本は現代の中国に対して私の知識の幅を広くしてくれた。しかしこの本に全く問題がないというわけではない。この本の著者はなぜか保守主義者を悪魔化(デーモナイズ)している。

 彼女は『レイプ・オブ・南京』を書いたアイリス・チャンに対して「ジャーナリストであったチャンは、このときから初めて南京大虐殺に関する資料を調べ始めたので、著作の内容には史実的あるいはデータ的に一部のまちがいがみられるようではあるが、しかし『レイプ・オブ・南京』はアメリカ社会に大きな衝撃を与えた」と書いているが、本当に一部のデータ間違いですむのだろうか。

 さらに一番重大な問題は、反共団体である史維会もおそらくは「中華思想」を抱えているという点である。この本の中でもこのような団体の動きが活発になったのは台湾において陳水扁総統の登場だった。彼らは台湾の独立を恐れたのである。そこでこの団体に今回のチベット暴動鎮圧をどう思うか尋ねてみたい。おそらくはやむを得なかったと答えるのではないか。しかしそのような「人道主義」はありえるのだろうか。
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by masaya1967.7 | 2008-03-29 22:18

鳥居民

 鳥居民先生が産經新聞に書いておられる文を掲載します。

 22日の台湾の総統選挙で野党・国民党の馬英九氏が勝利を収めた。私は14日付の本欄で与党民進党の謝長廷氏の当選を予測すると述べた。そうならなかったことを私は残念に思っている。

 さて、ここで論じるのは、政治指導者が交代することのできる台湾の民主的な政治システムに対して、中国共産党指導部はどのように立ち回ってきたか、そしてチベットとその周辺地域に起きている不穏な状況にかれらはどう対応できるのかということだ。

 謝長廷氏に比べて、中国に対してより融和的な態度をとってきた馬英九氏の当選は、現在、世界中から批判と非難のただなかにある中国共産党の首脳たちにとって、大きなプレゼントになっている。だが、台湾のこの総統選は、中国共産党指導部が台湾の民主的な政治システムを争う余地のない事実として認めざるをえなくなり、傍観するしかなくなった結果であることをかれらは忘れてはいまい。

 中国軍が台湾の高雄と基隆の沖合にミサイルを撃ち込んだことがある。12年前だ。1996年3月7日の深夜、中国軍は福建省永安近くの移動式発射台から台湾に向けて3発のミサイルを発射した。本欄の読者もミサイル恫喝(どうかつ)があったことを思いだし、アメリカは2隻の空母を台湾の近海に送ったのだ、中国側は李登輝氏を落選させようとしてミサイルを発射したのだと思い起こすことになろう。

 ≪戒厳令下の台湾が狙い≫

 多くの研究者がそのように説いてきたのだが、じつはその解釈は正しくない。

 ミサイルを撃ち込んで、李登輝氏を落選させることはできなかった。中国共産党指導部もそれをはっきり予測できたことなのである。では、なぜ台湾海峡で数カ月にわたる軍事演習をつづけ、ミサイルまで発射したのか。中国共産党指導部はつぎのように読んでいた。台湾人に脅しをかけ、恐慌状態にさせ、台湾のすべての株式を暴落させる。台湾の大金持ちから小金持ちまでが証券取引所の一時閉鎖を求め、戒厳令を布いてほしいと願うようにさせる。
 中国軍の威圧がさらにつづくと台湾の軍部を警戒させて、戒厳令を布くことを軍人たちも望むようになる。
 そして世界最長の戒厳令下にあった台湾人は戒厳令に慣れているとも思ったはずだ。
 共産党幹部の意図は、李登輝氏を落選させようとしたのではなかった。李氏が全台湾人から選ばれた民主的な指導者となるのを阻止し、かれを専制体制の独裁者にしておこうとしたのである。

 中国共産党は自分たちが独裁をつづけていくためには、腐敗と非道の歴史を持った国民党の独裁が台湾につづいているのだと人々を教化、宣伝したい。そこで台湾に再び戒厳令を布かせ、総統選挙を無期延期させようと願ってこそ、ミサイルを撃ち込むことになったのである。

 中国のその意図を挫(くじ)いたのは、アメリカの2隻の空母だったことは言うまでもない。

 ≪「ひ弱な超大国」≫

 さて、中国共産党指導部は民主主義政体の台湾の存在が国内にどう影響するかと不安を抱きながらも座視せざるをえなくなった。だが、軍と警察を自由に使えるところでは、国内へ民主と自由の理念が入ってくるのを恐れ、香港人が民主的な方法で自分たちの代表を選ぶのを許さないし、チベット、新疆に「高度な自治」を与えようとしない

 アメリカの中国専門家、スーザン・シャーク女史がいみじくも言ったように、「ひ弱な超大国、中国」なのである。
 だれもが知るように、胡錦濤氏はチベットの党委書記だったことが、そのあとのスピード出世の端緒となった。そのときの鉄兜(かぶと)姿のかれの新聞写真がある。1989年3月にラサに戒厳令を布いたときのものだ。

 上海市党委書記の陳良宇氏は2年前に狙い撃ちされて、解任、投獄されたが、それより前、江沢民氏の後ろ盾があって、飛ぶ鳥を落とす勢いだったとき、胡錦濤総書記を何度かからかった。鉄兜が好きなのは、独裁者ムソリーニだったと陳氏は部下たちに演説し、坊主が1人2人死んだだけで、あのように騒ぎ立ててと嘘(うそ)を交じえて嘲笑(ちょうしょう)した。

 獄中の陳良宇氏に尋ねてみたい。1989年のチベットの騒乱から天安門事件がおきたときまでの中国の状況と比べて、現在の中国はずっと安定しているのだろうか、と。

 胡錦濤氏は現在、自分が早急に取り組まなければならない重大な課題がいくつもあるのを承知している。かれはそれらのうちのいくつかでも解決することができるのだろうか。

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 相変わらずの鋭い分析である。『ザ・セカンド・ワールド』を読んだときにも感じたのだが、中国問題は彼の国の内政問題なのである。
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by masaya1967.7 | 2008-03-27 10:40

The Second Worldを読む。

 チャールズ・カプチャンが書いた『アメリカ時代の終わり』には冷戦が終わった後の世界ではアメリカとヨーロッパが地政学上の利益をめぐって争うだろうと予測していた。この本を読んだ後にイラク戦争がおこり、フランスとドイツが激しくアメリカに反対し、カプチャンの予測通りになったことに驚いたものだった。彼はこの本の中でアジアに対しては特別なことは述べていなかったと思う。後に彼は雑誌『諸君』のインタビューに答えて、将来の日本が核武装を含む日本の大国化を予想していた。

今回読んだ『ザ・セカンド・ワールド』ではアメリカとE.Uと中国が地政学上の利益をめぐって争うのだと予想している。この本の著者パラ・カンナはこの3カ国が争う地域を旅行して、歴史を調べ、社会科学的見地から説明するという大変困難なことを一人で成し遂げている。彼の調べた地域は、中南米、中東、近東、東南アジアまで及んでいる。事実この本を読んでいるとなぜか彼の書いている地域に旅行したくなってくるから不思議である。

 この本の中で特に感じたのは、中国の外交的影響力のすごさである。アフリカ諸国の借金を帳消しにしたり、中南米ではインフラの整備を手伝い、シリアでは石油と天然ガス開発に多額の援助をし、イラク政府には武器を売っている。日本の外交よりも活動が数段上である。そのことからも筆者のカンナ氏が中国がヨーロッパとアメリカと同格であると認めたことが推察できる。しかし中国の大国化を外交力から判断しても大丈夫なのだろうか。

 ルーズベルト大統領が日本を4つの島に日本人を閉じ込めて、世界を取り仕切る4人の警察官の一角に中国が占めることができたのも、中国の外交力の賜物であったといっていい。ところがこの最大のチャンスを中国の内戦がつぶしてしまうのである。今度の台湾の選挙でも国民党代表がせっかく有利だったのに、チベット弾圧でせっかくのチャンスをつぶそうとしている。中国ではいつでも国内政治が最大の不安定要因なのである。

 さらにカンナ氏は中国経済が日本や韓国のように保護主義に陥らずに発展したことを評価しているが、これは正しいのだろうか。アメリカやヨーロッパが発展した時は産業革命が最初に起こったイギリスに対して保護主義をとっていたのである。その後に発展してから自由化していったのである。中国が開放政策をとって発展したのは事実であるが、それをもってアメリカやヨーロッパのようになるというのは無理ではないのか。

 このように彼の中国に対する見方にはかなりの異議がある。しかし日本が将来核武装を含む大国になると予想したカプチャンに対して彼はこうのべている。

 Even if it acquires nuclear weapons , Japan's cultural uniqueness means that it cannot garner broad allegiance in Asia and must be content to play second fiddle to china, which has blocked its bid for a permanent seat on the UN Security Council.

確かに日本がヨーロッパやアメリカのように大国化するというよりも東アジア地域を通じて世界のバランサーになるというカンナの見方の方がリアリティーがあると思う。この本を読んでカンナがカプチャンらと同等の一級の知識人であることは認識できたのだがそれでもアジアの将来にはいまひとつ確信がもてないのである。

 
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by masaya1967.7 | 2008-03-21 14:30

今読んでいる本

 今Parag Khannaというインド系の人が書いた、The Second Worldという本を読んでいる。3分の1読み終わったのだが、話の筋道はこうである。

 世界には先進国とアフリカのような徹底的に遅れた国々の中間に『第2の世界』が存在する。これらの国々は経済学用語で言えばいわゆる「イマージング・マーケット」に相当する。アメリカとEU及び中国がこれらの国々の利益を巡って帝国主義的な争いをしているというのが主題である。

 今まで読んだところまででは、日本は殆ど登場してこない。最初にでてきたところではこう書いている。

Russia,Japan,India cannot assert themselves globally, militarily or otherwise; they are not superpowers but balancers whose support (or lack there of)can buttress or retard the dominance of the three super powers without preventing it outright.

 つまり日本はバランサーにはなれるけれども、真の大国とは言えないのだ。もちろん現状の日本はそのとおりであろう。しかしバランサーである日本が超大国の中国に巨額のお金を援助している状態は不自然ではないのか。疑問は残るが、読み終わってからもう一度書いてみたい。
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by masaya1967.7 | 2008-03-16 02:43

『暗流』

 秋田浩之著『暗流 米中日外交三国志』の中に次のような記述があった。2006年5月に日米間で合意された在日米軍再編について『再編の最大の狙いとは、中国軍の台頭に対抗することにある。日本人があまり意識していないうちに日本は米国の「対中防波堤」戦略のかかせない役者として舞台にたっているのである』。

 キッシンジャーが同盟には敵を必要とすると喝破していたが、日米ガイドライン以来日米同盟は明らかに中国を仮想敵にしている。日本のリーダーがそれをおおっぴらに言わないのは相手を不必要に刺激したくないからであろう。だからといって田原総一郎氏のように冷戦中から日本には仮想敵がいなかったと主張するのはあまりにも愚かである。

 やはり中国が民主化すれば日米同盟の見直しは避けられないであろう。問題はいったいいつになれば中国が民主化するかである。共産党が永遠に政権を握ることは不可能であると思っていたら、チベットで暴動が起こっていた。
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by masaya1967.7 | 2008-03-15 05:27

オバマとクリントンの外交論

 アメリカの民主党予備選挙で外交問題でオバマ候補とクリントン候補の際立った対立を見せているのが、北朝鮮やキューバやイランなどのいわゆるローグ(rogue)ステートの指導者と条件を付けずに会うべきか否かという問題である。オバマ候補が条件などを付けずにそのような国の指導者と会うべきだと提案すれば、クリントン候補はそれに反対している。これはどちらが正しいのだろうか。

 E.H.カーの書いた『危機の20年』に次のようなくだりがある。「したがって、この主導権は、それが保持されるためには互恵の要素ー主導権を握っている側における自己犠牲の要素を含んでいなければならない。それによって、この主導権が世界共同体の他の構成者たちに容れられることになるのである。・・・ドイツ人は高次の倫理を持つとか、アメリカの原理は人類の原理であるとか、イギリスの安全は世界最高の福利であるなどである。このような表現では、その国がおよそ犠牲を払うことは実際に求めようがないわけである。」

 現在、アメリカは唯一の超大国である。故に他の国よりもはるかに外交上のカードを持っていることになる。ところが首脳会談を行うにあたって条件を付けるということは相手に外交カードをただできれと言っているに等しい。これではほんとうにアメリカと話し合いたいと思っていても二の足を踏むであろう。

 この問題で思い出すことは、日本の近衛文麿首相がローズベルと直接会談を行って、日本が中国からの撤退を決めてしまおうとしたことだった。当時のグルー駐日大使もこの近衛案に賛成していたのだが、結局は条件を付けられて開けないことになってしまったのである。日米戦争を防げたのだから、まことに残念なことであった。

 よって、私としてはオバマの条件なしで話し合うほうがアメリカにとって全く合理的な判断であると思う。このままオバマ候補が有力であってくれたらいいのだが。
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by masaya1967.7 | 2008-03-04 11:59

自由化論への疑問

 先月の『朝まで生テレビ』で小泉・竹中路線を主唱していた本間近畿大教授が社民党の辻本氏から自由化してうまくいった事例を聞かれてはっきりと答えたのが、携帯電話市場だけだったのは正直びっくりした。しかし考えてみれば、他の事例を探すのは非常に難しいのである。

 もちろん、官僚主導の経済が良いとはちっとも思えないのだが、これまで自由化すればうまくいくのだという議論はあまりにも単純すぎた。ロシアがデフォルトに陥ったときに『フォーリン・アフェアーズ』を読んでいたら、ロシアが失敗したのは急激な自由化を進めたからだという人と、自由化が足りなかったから破産したのだという人が論争していた。今から振り返って考えてみると、ロシアの復活は資源の高騰という要因が最も大きく、自由化か否かはあまり関係なかったように感じる。

 翻って、日本は小泉・竹中路線を突っ走っている間も、適切なマクロ経済政策がとられず、デフレから脱出できていない。結局マクロの金融政策が何よりも重要ではなかったのか。
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by masaya1967.7 | 2008-03-02 11:51