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本当にヤバイ中国経済

 以前、三橋貴明著の『本当にヤバイ韓国経済』を読んで、一見すると無味乾燥な国際経済の指標からダイナミックな仮説を考えだせるものだと感心した。今回の『本当にヤバイ中国経済」においてはサブプライム以降の世界経済を例のごとく国際経済学の指標で分析している。

 彼は国際収支のパターンの違いからグループ分けを行っている。経常収支の巨大なアメリカ、投資からの収益が多いスイス、経常収支黒字の日本、そして最後に経常収支と資本収支が両方とも黒字の中国である。これらの比較から中国経済の矛盾を導きだしている。

 ザカリアは世界に国を開いた中国は良くて、閉鎖的な日本はダメだと書いていたが、サブプライム以降激変を続ける世界経済にもろに影響を受けるのは中国の方なのである。(貿易に依存している割合が多いのは中国の方が多いのだから当たり前ではある)三橋氏は中国において不況とインフレが同時に起こるスタグフレーションという現象が起こりつつあると述べている。

 日本においてはバブル崩壊以降不況とデフレに見舞われが、デフレの場合はお金の価値が上がっていくので経済的には苦しさが軽減するのである。(ニュース・ステーションの古館伊知郎を代表とするバカ・マスコミは低金利で大変だといつもさわいでいるが、5%の金利が付こうともそれ以上の勢いでインフレが進めばお金の価値は減るのである。)

 そしてスタグフレーションが進行した中国をソ連崩壊後のロシアと清朝末期が重なったものになると予測している。日本の経営者には中国経済のヘッジとしてインドやベトナムへの投資をすすめている。(カンナやザカリアのインド系欧米知識人は何故か祖国より中国の方を重視している)

 以前紹介した橘玲氏の世界経済ポートフォリオは理論的に今でも間違っているとは思っていないが、サブプライムの影響が意外に大きいものだとこの本を読んで実感した。アメリカの株価などもいったん上がりかけてきたものが、ここ数日また下げに転じてきたので、ここは静観することにする。(どうも人に影響されやすい)
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by masaya1967.7 | 2008-05-27 00:20

The Post American World 5

 最後にザカリアはアメリカが将来にわたって他国と比べて優れている点を二つ挙げている。一つ目は移民問題。ヨーロッパに住むアラブ人が過激化しているのと比べて、アメリカに住むアラブ系は比較的うまくやっているらしい。さらにヨーロッパや日本が移民に厳しくなっていることがアメリカと違うことだという。

 「日本は将来にわたっての労働力不足に直面しているが、日本は移民を受け入れるのを拒否し、女性の労働力をもうまく活用していない」 197頁

 そしてもう一つのアメリカの強みは高等教育の充実である。

 「アメリカの中では人々は大胆に権威に挑戦し、失敗し、また這い上がることが許されている。ノーベル賞を何十個もとっているのはアメリカであって日本ではない」193頁

 ザカリアは日本の教育失敗にゆとり教育批判をあげているのだが。

 彼の結論が本当に正しければ、日本の衰退は避けられないのだろうか。
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by masaya1967.7 | 2008-05-26 03:45

The Post American World 4


 ザカリアは西欧諸国が近代化に成功する中で、アジアはなぜ近代化に失敗したのだろうかと問いかけている。事実1492年にコロンバスがアメリカ大陸を発見する以前に中国はもっと大掛かりな航海を行ったにもかかわらず、それ以後は発展の勢いを失ってしまったようだ、と述べるのである。

 「ほとんどの非西欧諸国は、市民社会は弱く、政府に依存している」60頁

 そしてその理由をほとんどのアジア諸国は中央集権的で専制君主が国を治めたからだと書いているが、このことは日本にはあてはまるのだろうか。ザカリアは近代的なことの象徴としてオランダがニシンの商売に先物取り引きを使ったことを書いているが、日本も堂島に有名な先物取り引き市場が存在しているのである。

 さらにこの本で初めて知ったのだが、ザカリアは次のように書いている。「啓蒙主義の時代、孔子の教えはとてもはやっていた。ニーダムという人はフランス革命の先頭に立つような人は皆、儒教の古典を読んでいたと書いている。(ボルテール、ルソーなど)1600年から1649年まで30−50の中国古典が10年ごとに発表され、1700−1709の間には599もの中国本が出回ったのである」110頁

 中国系の評論家石平が江戸期の日本の論語研究に感嘆したように、同じ頃ヨーロッパでも論語が読まれていたのだ。このようにザカリアの本を読む限り、彼の主張とは逆にヨーロッパと日本の同一性が浮かび上がってくるのである(フランスの評論家トッドは日本をヨーロッパのいとこと呼んでいた。)

 ザカリアの日本の歴史に対する知識に私は少し不満を持つのだが、一方ですごいところを見てると感じたところがある。彼は近代化にともなって非西欧諸国の服装はどうなっていくかを考察し、インドでは伝統的なサリーが日本の着物のように何かの記念日や儀式の時にしか着られなくなっていくのではないかと述べ(これって日本化するということ?)こう書いている。

 「日本人は固有の文化を持つにもかかわらず、一歩先を進んでいる。彼らは内閣の就任式などのときにモーニング・コートやストライプ・パンツを履くが、これは100年前のイギリスのエドワード王時代の外交官のスタイルなのである。」76頁

 彼が近代化のメルクマールに服装をもってきたことは鋭いと思う。というのも明治維新後の日本人が中国人に真っ先にバカにされたのがこの洋装の問題だからである。彼によればアラブ諸国はこの点でまだダメらしい。

 いずれにせよ、ザカリアの本を読んで謎が深まったのは江戸時代の日本のことであった。現在世界にはやっている日本の文化では圧倒的に江戸時代に起源を持つものが多いしその時代を単なる『鎖国』と一言でかたづけるにはあまりにも問題が多いと思った。7月にドナルド・トビという人が鎖国本を出すらしいので、また感想を書いてみたい。

 

 
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by masaya1967.7 | 2008-05-25 01:15

パク・チソン

 朝鮮日報より
 
 英国の日刊紙タイムズは23日付の記事で、欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズ・リーグ決勝戦に朴智星(パク・チソン)=マンチェスター・ユナイテッド=が出場できなかったことについて、韓国人は大きな失望を感じているとし、「韓国人はマンチェスター・ユナイテッドに裏切られたと思っている。これを挽回するためにマーケティング担当者は、今後長い間多くの努力が必要となるだろう」と報じた。同紙は「朴智星は監督の決定に対する失望を隠せなかった。56万ポンド(約1億150万円)のボーナスが彼の気分を少しはやわらげてくれるだろうが、誰もが知っているように、朴智星は出場することを強く望んでいた」とも報じた。
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感想。イギリスもエグいことをするな。メジャーリーグの名将といわれるカージナルスのラルーサ監督の田口選手の起用方法にも同じような感覚を持ったことがある。多分自分が同じことをされたらぶちきれていると思う。

 結論。欧米のトップリーグでちゃんとした扱いを受けるには、イチローのように飛び抜けていなければならないのだろう。朴もアジア人としてはトップレベルかもしれないが、世界的には韓国がいう程のことでもないのだろう。
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by masaya1967.7 | 2008-05-24 22:27

The Post American World 3

  以前、福田和也の文章で今回のアメリカのイラク戦争と100年前のイギリスのボーア戦争を比較したものを読んだことがある。アメリカの衰退を予感させるものだったと思う。ボーア戦争は1899年から1902年まで続き、イギリスは世界で最初の強制収容所を作るなどの乱暴な政策をとり、45000人のゲリラ兵を鎮圧するのに述べ45万人の兵力を投入している。アメリカのイラク戦争に事実よく似ている。ところがこの時代のイギリスとアメリカでは経済的状況が全然違うとザカリアは主張するのだ。

 「1870年までにアメリカはほとんどの工業指標でイギリスにならび、1880年代の初頭には実際に追い抜いた。15年後のドイツがイギリスを追い抜いたように。第1次大戦までにアメリカの経済力はイギリスの2倍に達し、フランスとロシアを足したものはイギリスの経済力を超えていた。1860年にイギリスは世界の鉄の53%を生産していたが、1910年には10%に満たなくなるのである。」 174頁

 この問題についてはザカリアの説明は全く正しいのだが、私の注目点は別のところにある。アメリカやドイツがイギリスを経済的に追い越そうとした19世紀の後半、イギリスは徹底した自由貿易を維持していた。ところがそれを追い越そうとするアメリカやドイツは高関税を維持して、保護貿易を行っていたのである。ちょうど第2次大戦後の日本のように。

 ではこの頃、日本は何をしていたのだろうか。日本もアメリカやドイツのように保護貿易を行っていたらもっと早く経済大国になっていたのではないのだろうか、と考えるのは自然だろう。実は当時の日本は悲惨なことに関税自主権がなかったのである。これではアメリカやドイツのように高関税にするわけにはいかなかったのである。

 さて日本は戦後、ザカリアが主張するように保護主義的で成長するのだが、これは決して特殊なことではない。19世紀後半のドイツやアメリカに前例があるのである。中国の経済発展の仕方の方が特殊なのである。よってザカリアが中国と日本を比較して中国がうまくいくのだという判断はあまりにも単純すぎる。

 中国は資本や技術を他国から受け入れることによって、年間10%以上の成長を続けている。この他人の褌で相撲をとって他人に勝つという戦略は有効なのだろうか。結果はまだ出ていないが、この中国のやり方がうまくいくのなら、外資規制を実施しようとしている通産事務次官の首をそっこくはねなければならないだろう。
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by masaya1967.7 | 2008-05-24 01:02

The Post American World 2

 この本の主題は「他国の勃興」(The rise of the rest)にあるのだが、ザカリアはその中の中心をしめるインドと中国について詳しく書いている。彼はインドより中国の方が発展の可能性があると考えている。そういえばThe Second Worldを書いたカンナも中国の方を重視していた。これらインド系知識人が中国を重視するのには中国の潜在的な経済成長力にある。ザカリアは中国の経済について次のように考えている。

 「中国はかなり開かれた貿易と投資の政策を追求している。これらの理由から中国は決して新しい日本ではない。北京は、国内の市場や社会をを保護して輸出主導の経済成長を進めた日本のやり方を適用していない。中国は世界に向けて国を開いたのである。現在中国経済に貿易が占める割合は70%にも達しているのである。」91ー92頁

 一方ザカリアは日本について次のように書いている(この本は色々なところで日本が顔を出すのだが、ほとんどが反面教師の役割を演じている。)

 「1985年、日本は既に世界で第2番目の経済大国であった。多数の専門家は日本がアメリカを追い越すだろうと信じていた。しかし日本の経済、制度、政治が完璧に近代化されていなかったので、日本は最後の跳躍につまずいてしまったのである」 20頁

 このようにザカリアの場合(カンナの場合も同じなのだが)日本と中国を比較して日本は失敗したが中国はうまくいくだろうと予測するのである。しかし私はこの考え方は非常に問題があると思う。

 この問題を考えるにあたり、ザカリアの本でイラク戦争とそれを遡る100年前のイギリスのボーア戦争を比較している部分があるので、その部分を利用して日本と中国の問題を考えてみたい。
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by masaya1967.7 | 2008-05-22 22:01

The Post American World 1

Fareed Zakaria が書いた『アメリカ以後の世界』を読んだので感想を述べてみたい。今回の彼の本の主題はアメリカが国として衰退するという意味ではなく、先進国以外の国々が成長してくるのがこれからの世界の特徴であると述べている。

 「イマージング・マーケットと呼ばれる地域は世界の成長の約半分を占める。購買力平価でみればこれら地域の経済の割合は全世界の40パーセントをしめるのである。(GDPの締める割合は30パーセント)」 20頁

 このようにこれからの国際政治を考える上でこれらの地域を無視して政策を作ることは不可能である。環境問題における京都議定書を見よ。中国やインド、ロシア、ブラジルなどを無視してはうまくやっていけないのである。

 ここで少し話しは変わるが、作家橘玲氏の『賢者の海外投資術』で彼は最も合理的な戦略として全世界市場平均のポートフォリオを作ることを主張し、そのなかでイマージング・マーケットの比率を30%に保っておくように述べていた。図らずもザカリアは全く同じことを国際政治面で主張しているわけである。

 私も彼らの案を受け入れイマージング・マーケットのファンドを買うことに決めた。そこでファンドを探したのだが投資信託ではBRICSとかは簡単に見つかるのだが、イマージング市場全体のファンドは意外となかった。マネックスで今回1%代の手数料で発売されたファンドとイートレード証券のイマージング・ETF(一回買うごとに手数料2500円)がコスト的に一番安かったのでこれを少しずつ買ってみようと思う。

 書評をするはずが、フィナンシャル・アドバイザーのようになってしまったので、また次回から少しずつザカリアの本を解説していきたい。

 
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by masaya1967.7 | 2008-05-22 02:10

中国人の目から見たチベット問題

 今週のニューズ・ウィークにシンガポールの論客Kishore Mahbubaniの"Tibet Through Chinese Eyes"という興味深いエッセーが出たのでそれを評論してみたいと思う。

 彼は欧米の中国批判に人種主義の要素を感じている。

 「インディアンやアボリジニを虐殺した人々がチベット問題で中国を批判するとは皮肉である。さらにアムネスティーがわれわれの時代のグーラグ(gulag)と呼んだガンタナモ、それに加えてアブ・グレイブ収容所やヨーロッパが協力したワシントンのrendition program(アルカイダの協力者などはアメリカ国内では拷問できないから東ヨーロッパなどに連れて行って拷問を行う計画)は西欧諸国の合法性や信頼性を著しく毀損した」

 私も欧米の新聞がインチキ写真を使って中国人を批判したのは卑怯であると思う。しかしながら中国に対して同情的になれないのは日本の戦争の残虐性などが欧米の新聞で誇張されたのをさらに誇張するのが中国だからである。

 そして彼は欧米諸国が中国批判を行うことは、中国の怒ったナショナリズムを刺激し、誰の利益にもならないさらなるチベットへの圧政を強める結果になってしまうことを懸念する。そして最後に他の国々全てがオリンピックの開会式に出席してヨーロッパの国々だけが欠席していれば、それはヨーロッパの存在感の希薄さを強調するだけだろうと結論づけている。

 しかし私がもっとも懸念することはヨーロッパ諸国の欠席問題ではなく、チベット問題であまり発言しなかった日本の首相がオリンピック開会式に出席し、日本選手団入場で中国人民から圧倒的なブーイングを受け、こんなことなら出席しなかったらよかったのではないかといわれる可能性である。

 中国のナショナリズムに関していえば、もっとも厄介なのは義和団事件化することだろう。扶清滅洋を唱える集団が北京に現れて、時の政府がそれを抑制することに失敗し欧米諸国に宣戦布告してしまうのである。オリンピックが終わるまでは、中国政府は必死にナショナリズムを抑えようとするはずであるが、オリンピックが終わればどうなるかわわからない。ナショナリズムに押されて北京政府が台湾を採りにいくことも否定できないのである。いずれにしろ江沢民時代に始まった「愛国主義教育」はパンドラの箱を全開にしてしまったのである。

 
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by masaya1967.7 | 2008-05-03 04:47