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バーナンキ連銀総裁とプアな日銀の金融政策

 バーナンキ連銀総裁が以前に日本の金融政策をプアだと評したことがある。(『お国の経済』高橋洋一)バーナンキはアメリカ大恐慌の研究者で経済がデフレーションに陥った時はマネーの供給を増やしてやれば景気は活性化することができるとの仮説をもっており、時々お金をしぼる日銀のやり方をプアとよんだのである。通貨供給を増やすためにはお金をヘリコプターからばらまけば良いといったことからヘリコプター・ベンとアメリカでは呼ばれているらしい。

 私がインフレ・ターゲットの存在を知ったのは今回ノーベル賞を受賞したポール・クルーグマンの論文を読んだのが最初だった。日本経済は公定歩合を0%近くに下げても経済が回復しないのはケインズが主張した『流動性の罠』にはまっているからで、経済を活性化させるにはマネーを市場に供給する、具体的には日銀が国債を買い受ける政策を推奨していた。

 なるほどと当時は感心していたのだが、結局日銀はそのような極端な政策をとることはなかった。それ故に経済が回復するのに時間がかかってしまったともいえる。今回のサブプライム危機にバーナンキが当事者になって、彼の金融政策でアメリカはすぐに立ち直れるのだろうか。

 シャルマがニューズ・ウィークで述べていたように今回の問題はバブル当時の日本よりもアメリカは過大に国と個人が借金を抱え込んでしまっているのが原因である。膨大な借金を抱えていて多少のインフレでお金を使うようになるというのは空理空論であろう。現在アメリカでお金をばらまいても借金の返済に充てられるだけで消費には結びつかないであろう。

 結局、今回のアメリカの危機の場合、金融政策も財政政策もそんなに有効でないと思われる。何よりもまずは「借金返済」である。

 
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by masaya1967.7 | 2008-10-30 01:45

サブプライム危機と大恐慌と日本のバブル崩壊

 November 3,2008の『ニューズ・ウィーク』にRuchir Sharmaという人がアメリカの大恐慌と日本のバブル崩壊を比較したおもしろい記事を書いています。シャルマはモルガン・スタンレーに勤めており、石油価格が下がる前から、これはバブルだと正しい指摘をしていました。

 この記事によれば、国と民間の借金がGDPの300%に達しようとしているのは、アメリカの1920年代と日本の1980年代にしか見当たらないそうです。(今回のサブプライムの危機は350%もあるのだそうです)

 アメリカが大恐慌に陥った時、財務長官アンドリュー・メロンの意見はシュンペーターやハイエクの意見を取り入れ、不良資産や余った人や在庫を『清算』してしまえというものだった。自由にすれば何もかもうまくいくというアメリカらしい考え方がはっきされたわけである。

 その結果1929年から1933年アメリカの経済規模は半分になり、物価は3分の1になり失業率は25%にものぼっている。しかしこれによって借金はGDPの150%にまで減ったのである。借金が減ったため民間の投資により生産性の拡大が起き、10年後にはアメリカの経済規模は倍になったのである。

 一方日本は、アメリカのように市場に任せることはなく財政支出や金利を下げることによって経済を成長させようとした。そのために1989年に75%であった国の借金の割合が175%となり、民間の借金の割合が225%から150%にまで落ちているが、総額ではあまり変わっていない。国の借金の割合が大きくなったため日本の生産性の上昇は微々たるものとなってしまい、1989年から現在まで25%しか経済規模は大きくなっていないのである。

 現在のアメリカが1920年代の処方箋を採ることは不可能であろう。だからシャルマのサブタイトルは「数週間前まで日本の状態に陥ることは最悪のシナリオとされていたが今ではそれが最高のケースになっている」となっている。

 最後にシャルマは日本の企業が1989年までの借金をそれ以上続けていけなかったようにアメリカの消費者がこれ以上の消費を続けていくことは不可能であるとし、アメリカの成長は低下せざるをえないと予想している。

 彼の議論の良いところは、日本のやり方が無能であるとかアメリカの方が有能であるという価値判断をおこなっていないところである。日本のやり方によいところと(失業率が25%もいかなかった)やその結果の悪い面(生産性が伸びない)があったことは間違いないが、日本やアメリカの良いところだけをとろうとする魔法の杖はないのである。
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by masaya1967.7 | 2008-10-29 19:20

今そこにあるアメリカの危機の犯人はレーガン大統領だった。

 今回アマゾンの政治ランキングで常に上位にあるアンドリュー・ヴェイセヴィッチの『力の限界』という本を読んだ。著者は陸軍出身で現在はボストン大学の教授をしている。

 彼は、外交と内政は分離できないと主張する。ロナルド・レーガン大統領は当選するなり、大減税と大軍拡を同時に行った。アメリカ人の消費は限りなく増え、貿易収支は悪化し、さらに中東には安い石油を過大に求めるようになってきた。レーガン大統領は冷戦を終えるのに多大な貢献があったかもしれないが、彼の負の遺産も大きかった。「歴史は2003年の悲惨なイラク戦争をブッシュ大統領の責任とするだろうが、この戦争のゴッド・ファーザーはレーガン大統領である」と彼は述べるのである。彼の言論の正しさは、イラクやアフガニスタンでの失敗とサブプライムの危機はブッシュ大統領のときに同時にやってきたことでもわかる。

 先週の『ニューズ・ウィーク』でフランシス・フクヤマも今回のアメリカの危機がレーガン大統領にあると述べていた。経済は自由にすれば勝手に均衡するのだという考えは、カリフォルニアの電力危機を産み、アジアの通貨危機を悪化させ、今回のサブ・プライムの危機に至ったのである。

 ヴェイセヴィッチ教授はアメリカが今回の危機から立ち直るには、軍事力による対外政策や過大な消費を改めなければならないと書いている。過激なイスラムには「封じ込め」政策を用い、核軍縮や環境問題に取り組まなければならないと説くのである。

 今回の危機の後のアメリカがヴェイセビッチ教授の主張する通りに生まれ変わるのであれば日本にとっても好都合であるのだが、グリーンスパン曰く100年に1度の世界的な危機は日本にも影響を及ぼすであろう。

 経済における、小泉・竹中路線の意味したものは、円安による外需依存の成長であったが、現在の円高はこの政策の破綻を意味している。これからは日本の国内総生産の6割を占める内需を刺激して経済成長を達成しなければならないだろう。さらに日本には選挙が控えている。この選挙において自民党の優位は消え去り、政権交代または政界再編が行われるだろう。そうなれば必然的に日本の外交も変わってくるはずなのである。

 世界大恐慌以前と以後が全く違う世界となったように、今回のサブ・プライム危機後の世界とはそれ以前とは全く違うものになっているであろう。
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by masaya1967.7 | 2008-10-29 05:39

北朝鮮の恫喝

 『時事通信』より

 「25日の平壌放送によると、北朝鮮の同日付労働党機関紙「労働新聞」は、日本政府が今月、北朝鮮への経済制裁を半年間延長したことについて「核問題の解決にブレーキをかけ、朝日関係を極度に悪化させる妄動」だと非難する論評を掲載、日本に対し、「過去の清算」や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)への「弾圧」停止などを改めて求めた。」

 アメリカによるテロ支援国家解除を受けて、北朝鮮の日本非難が高まってきたように思う。これからの問題は核を持った北朝鮮が日本に上記のような問題を達成するために核による恫喝を行う可能性である。この場合「非核」の日本は困った立場におかれるだろう。現時点で「アメリカの核の傘」があるといわれても・・・。
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by masaya1967.7 | 2008-10-25 19:29

クライン・孝子

 産經新聞の『正論』にクライン・孝子女史がドイツの今回の金融危機の受け止め方について書いています。彼女によればドイツ人は今回の出来事を1929年の大恐慌と同じような感覚をもってみているとのことです。

 確かに今回の金融危機の過程は表面上1920年代に似ていると思う。第1次大戦のバブル景気に酔った日本であるが、そのバブルがはじけ昭和恐慌に突入してしまう。高橋是清のインフレ政策によって昭和恐慌からようやく脱出したのに、アメリカ発の恐慌に巻き込まれたのである。一方第1次大戦の主戦場になった欧州はアメリカの資本によって繁栄していたので、アメリカで恐慌が起き資本が引き上げられて大変なことになった。

 大恐慌以前とそれ以後では全く違う世界となってしまた。アメリカはホーリー・スムート法を通過させて高関税にして他国からの輸出をシャット・アウトし、イギリスもオタワ会議で植民地どうしの関税同盟を締結する。日本では石原莞爾が満州事変を起こし、ドイツではヒトラーの登場となる。

 今回の経済危機が1930年代のようになるとは思えないが、国際協調が難しくなってきていることだけは間違いない。
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by masaya1967.7 | 2008-10-24 01:11

上杉隆への疑問 2

 前回『週刊朝日』の上杉隆氏の記事を読んで違和感を持ったためブログを書いたのだが、外務省がこの記事に怒っているらしい。『産經新聞』に「幹部が上杉氏の取材を受け入れた事実は確認されず、信憑性は疑問だ。記事を掲載した週刊朝日の責任は重大だ」と書いている。

 どうも上杉氏は前回指摘したニューヨーク・タイムズのニコラス・クリストフのように裏付けの無いヨタ記事を書いてしまったらしい。彼の「記者クラブ」批判や、麻生首相が解散しないことを主張していたことは正しかったのだから、今回のことは非常にもったいないと思う。

 『週刊朝日』の編集長は「筆者である上杉隆氏とも協議した上で、今後の対応を考えたいと思います」とコメントしているのでこれからもこの事件を見守っていきたい。
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by masaya1967.7 | 2008-10-23 13:15

「親米保守派」の勘違い。

 慶応大学の阿川尚之教授は『週刊朝日』にアメリカが北朝鮮のテロ支援国指定解除を受けて「同盟国である日本が本当になすべきは手一杯アメリカを助けることです」と述べています。

 ちょっと待ってほしい。日本は北朝鮮の問題があるから、予防戦争であったイラク戦争に賛成し、アフガンで給油をしたのではなかったのか。日本は現行憲法でできる限りアメリカに対する協力をしているのであるが、それでも足りないという。

 また、岡崎久彦氏は「日本の安全は日米同盟で守られており、繁栄は米のマーケット、資本技術、影響力のお陰ですから、反発して刃向かうと日本の国益を害することになります。唇を噛んで堪え難きをしのぐしかないのです。20世紀初頭には情勢を読み違えて日英同盟を解消した結果、大敗戦という破綻を迎えました」といってます。

 彼らの議論の前提は日本が必死で努力すれば日米同盟は維持できると考えていることです。逆説的ですが、日本にそのような力はあるのでしょうか。日本外交の今回の教訓は、彼らとは反対に、日本がいくら努力しようと利害が異なれば裏切られるという国際政治の冷たい現実です。
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by masaya1967.7 | 2008-10-21 20:36

上杉隆への疑問

 今週号の『週刊朝日』にジャーナリストの上杉隆氏が麻生外交を批判する記事を書いています。その中である米国の通信社の東京支局長を引用しています。

 「日本ではほとんど報道されていないようだが、G7を筆頭に世界中のあらゆる国が既に日本に何らかのイニシアティブを期待するということはなくなった。日本だけが勘違いして世界のリーダーにならんとしているのだろうが、どの国も日本には何の期待もしていないし、もうよけいなことはしてくれるなというのが本音なのだ」

 私は麻生外交がうまくいっているというつもりはない。しかし日本の外交がこの東京支局長の言っているとおりだとは到底思えない。彼は『ジャーナリズム崩壊』で日本の記者クラブを批判していた。そのことは間違いないのだが、彼は自分の主張の正しさを以前に勤めていたニューヨーク・タイムズのニコラス・クリストフなどに語らせているのだ。

 しかしニコラス・クリストフが東京滞在中に書いた記事は日本人の夫婦には愛情が無いということや、旧日本兵がカニバリズムを行っていたという裏付けの無いものだった。(彼の言動の異常さは高山正之氏の著書に詳しく書かれている)毎日新聞の英語版が日本の変態記事を裏付けも無く書いて批判されているが、そのひな形はニコラス・クリストフだったのである。

 このように彼は新進気鋭のジャーナリストなのだが、書いていることは欧米が基準で日本をたたくという、進歩的文化人と同じ構造を持っているのである。
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by masaya1967.7 | 2008-10-20 21:42

ヒル国務次官補

 アメリカは北朝鮮に対するテロ国家指定を解除しました。これによって北朝鮮ははれて核武装国の仲間入りを達成しました。ところでこの合意を推進したヒル国務次官補とはどういう人物でしょうか。

 ヒル次官補はアメリカの議員に対して拉致問題や日本のことなど全く気にしていないと言っていたと昨日のニュース・ステーションが報じていました。このようなアメリカと同盟を組んで意味はあるのかと考える日本人は増えていくことでしょう。

 戦前にもホーンベックという外交官がいました。鳥居民氏の『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』から引用してみます。

 「国民政府を贔屓にして、国務省に勤務するようになってからは、日本、中国を統括する地位に長くとどまり、蒋介石の個人代表として派遣されている国民政府の高官と連絡を取り続けた。日本嫌いの彼は、日本を戦争に追い込むために絶対的な手をいくつか打った。彼は日本に対する経済封鎖を強く主張した。戦争を回避しようと望む近衛が求めたアメリカ大統領の首脳会談に強硬に反対した。そして戦争になってからは、日本の君主制度は廃止すべきだと説いた。戦後の日本が経済的混乱から社会不安を誘発しようとも、大陸の中央にあるドイツと異なり、島国の日本に限定されるから懸念する必要な無いと説いた」

 ホーンベックとヒルの思考に共通することは、日本に不利益なことを行っても日本など何もできないと完全になめていることである。このような人物が将来また現れて日本の国益を害するかもしれない。だから私はこれからも日米同盟を組んでいけば安泰だとする岡崎久彦らの意見に賛成できないのである。
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by masaya1967.7 | 2008-10-14 07:15

韓国とノーベル賞

 今回日本人がノーベル賞を獲得したことで韓国のメディアにおいて様々な評論がなされている。そのなかで今回初めて知った事柄がある。韓国では大学における専門教育において自国語で書かれた教科書で学んでいないようなのだ。

 渡部昇一氏の本で読んだことがあるのだが、これは発展途上国によくあるパターンで頭の良い人は英語などの言語で最先端のことを考えることができるが、外国語をマスターできない一般の人との差はますます広がっていく。この典型が朝鮮で、上流階級は中国人以上に漢文を使いこなしたが、一般人はそういう世界と全く関係がなかった。

 このような弊害を無くすために最も合理的なことは漢字を導入することである。呉善花女史は韓国人が漢字を失ったために、抽象的なことを考えることができなくなったと嘆いていた。もし彼女の言うとおりハングルに漢字を導入することができるなら、教科書の問題は一挙に解決する。日本の漢字入り教科書をそのまま訳せばいいからである。福沢諭吉がハングルと漢字を混ぜて新聞に書かせたのはさすがである。

 しかし、一方ではハングルを世界語にしようという奇妙なナショナリズムが存在するので、漢字導入は簡単にはいかないであろう。でもハングルで書かれた高等教育の教科書が存在しないことはハングルの最大の弱点ではないだろうか。
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by masaya1967.7 | 2008-10-10 04:09