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ザカリアの「米中合作」論

 ファーリード・ザカリアが今週号のニューズ・ウィークに面白いコラムを書いているので紹介したいと思います。

 「アメリカは不況に陥ってこれからGDPの7%〜11%におよぶ財政支出をおこなわなければならばい。問題は誰かがこの借金を買ってくれなければならないことである。この9月に中国が日本を抜いてアメリカの国債の保有者になっている。経済学者のスティグリッツは中国がこの不況を乗り切るのには2つの方法があるという。アメリカの消費者を支えるか、それとも自国のために使うかである。歴史学者のファーガソンは冷戦後に新しく誕生した国家をチャイメリカ(Chimerica)と呼んだ。その国は世界の国土の10%をしめ、25%の人口をほこり、過去8年間で世界の成長の半分をしめたのだとし、東半分は貯蓄を行い、西半分は消費に励んできたのである。いずれにしろオバマ大統領の大使人事で中国程重要性を占めるものは無いであろう。」要約

 果たしてこの「米中合作」は成功するのだろうか。故片岡鉄哉先生が最も恐れていたのがこの「米中合作」であった。これをやられたら、第2次世界大戦のように日本には勝ち目がないというのである。

 以前、カーター大統領の補佐官ブレジンスキーが「アメリッポン」という概念を提示したことがある。これはファーガソンが言ったようにその当時の日本の貯蓄をアメリカの為に使おうという動機が背景になった。1987年にブラック・マンデーが起こったときに、日銀の国内派は景気が過熱しているから金利を上げようと主張したのだが、この意見は結局顧みられず低金利政策を続ける「アメリッポン」政策が発動されたのである。ブラック・マンデーの危機はこのような日本の努力もあり深刻な危機にならずにすんだ。(ロンドン・エコノミストは社説でThank you for Japanと書いたのである)しかしながら日本はこの低金利政策でバブルが急速に膨れてしまったのである。

 これと同じ方法を今回の経済的危機に応用できるのであろうか。アメリカの個人はレーガン大統領以前と比べて多額の債務を現在保有している。さらに借金して消費を活性化させることが本当に可能なのだろうか。日本の企業がデフレ期にこつこつと借金を返したように、アメリカの個人も借金を返済しなければならないだろう。

 今週のニューズ・ウィークの別の記事で中国については「1990年の後半から中国の消費はGDPの50%から35%になっている」とあり、中国の輸出は今回の不況で大打撃を受けたのだから、中国国民の消費を向上させる政策が何よりも重要なのだが、今回の中国の50兆円にも及ぶ財政支出は、主に飛行場や鉄道などのインフラに当てられており、消費を伸ばすことが可能な社会保障には当てられていない。結果的に農村から都市に移動する人口を雇用可能にする8%成長には達せず、ジム・ウォーカーという中国の減速を以前から予測してきた人は中国の成長は5%にとどまると見ている。

 「北京政府は中国人民と新しい契約を結ばなければならない。過去30年中国を引っ張ってきた輸出主導経済に変わって社会保障に支えられた消費主導の経済に変わらなければならない。アメリカのルーズベルト大統領が1930年代におこなったことそれも10年間かけて」とこの記事は結んでいるがこれはそっくり日本の1990年代に当てはまる。あれだけ輸出主導といわれた日本経済なのだが、現在GDPに占める消費の割合は60%にまで達しているのである。

 このように経済の体質改善は長期にわたる苦しいものなのである。「米中合作」でこのような危機が簡単に乗り越えられるとは思わない。逆に中国共産党はこの長期の苦しさに耐えれるのだろうか。
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by masaya1967.7 | 2008-11-30 05:15

今日の『朝まで生テレビ』

 今回の『朝まで生テレビ』は多母神論文についてのものだった。以前『朝鮮日報』のコラムニストがこの事件を戦前の事件と比較しているのをみて大げさだと思っていたのだが、田原総一郎もそのように考えているらしい。鮮于鉦(ソン・ウジュン)は次のように書いている。

 「だが、隣国の視点から見れば、満州事変の首謀者・石原莞爾(満州事変当時の関東軍参謀)を、天皇の統帥権を侵害した大逆罪で処断できなかったかつての日本政府も、田母神氏を懲戒処分にすらできない現在の日本政府も、大差ないようにみえる。いや、かえって今のほうがもっと不吉だ。かつての明治憲法では、統帥権の規定があいまいだったが、現行の憲法は統帥権の「シビリアン・コントロール(文民統制)」をうたっている。にもかかわらず、何を理由に首相は手にしている権限さえ投げ出すのだろうか。」

 では一般国民は多母神氏の考え方を批判し、定年退職させた政府の措置に賛成しているのだろうか。『朝まで生テレビ』のアンケートでは圧倒的に多母神氏への支持が多かった。戦前も日本国民は心情的にクーデターを起こした青年将校に賛成し、満州事変に賛成していたのである。

 結局、戦前も戦後も民意をくむことのできなかった「政治」が問題なのである。私見では、「村山談話」を発表した自社政権から日本は政治的におかしくなっているのである。


 
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by masaya1967.7 | 2008-11-29 07:09

鳥居民『昭和20年 12木戸幸一の選択』

 『草思社』が倒産して鳥居民さんの『昭和20年』はどうなってしまうのだろうと思っていたところ、今回新刊が出てきて読者としては喜ばしい限りです。自分が重要だと思ったところを書いてみます。

 グルーが昭和19年5月に国務省の局長ポストに就いたのは、日本との講和をルーズベルト大統領が急いだ為である。ルーズベルトは国民党の将来が心配になったのである。

 昭和天皇とその弟であられる高松宮陛下が昭和16年11月30日に会談を行うが、高松宮の後ろには山本五十六がおり、彼は天皇の聖断によって日米の開戦阻止を訴えた。高松宮が11月20日に軍令部第1部第1課に勤務するようになるが、鳥居氏によればこのような人事ができるのは海軍の上層部にしかおらず、山本五十六だったであろうと推測している。残念ながらこの会談は木戸内大臣によって意味の無いものにされている。

 戦争の末期になって、皇室の中で戦争を早く終わらせればならないと考えられていたのは天皇の母親である皇太后であった。皇太后は疎開してほしいという天皇の要請を断固拒否されるのである。鳥居さんは皇太后のことを「男まさりの性格でめそめそと愚痴をこぼすことをしない」といい「山県有朋や西園寺公望といった元老は西太后のような睡蓮政治をおこなうことを恐れた」という。今NHKでやっている『篤姫』とあまりにも似ていると感じてしまった。

 アメリカと日本の対立点は中国からの撤兵問題であり、東条英機は陸軍のトップであるからそれに反対であるのはある意味では仕方ないが(官僚制度の限界である)、内大臣である木戸幸一がそれに反対であったことは鳥居民氏には解せないことであり、結局は2.26事件にまで遡らなければならないという。

 これらが今回の主なポイントである。鳥居民さんの本が近代史専攻の大学教授の本の脚注に登場することはほとんどない、それでも在野にとてつもない研究者がいるのが日本の江戸時代からの伝統なのである。
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by masaya1967.7 | 2008-11-27 00:01

続『竹島密約』

 『産經新聞』にロー・ダニエル著『竹島密約』の書評を鳥居民さんが書いています。重要部分を書き出してみます。

 「だが竹島で譲歩することは、韓国の国民感情を考えた場合、権威的な指導者である朴・正煕にもできなかった。『解決せざるをもって、解決をしたとみなす』という密約を結び、竹島領有の問題を棚上げして、その年、65年6月に日韓基本条約を結んだ。日本のお決まりの先延ばし外交と批判するのは易しい。だが、朴の治世18年の間に、最貧国グループだった一人当たりの国民所得が中進国のレベルにまで躍進した『漢江の奇跡』の力の土台に日韓基本条約があった」

 私もこの書評で間違いはないと思うが、もう一方で別の考え方が浮かんできてしまう。というのもこの密約は金・泳三大統領時代に裏切られてしまうからである。ロー・ダニエルは次のように書いている。

 「金・泳三大統領は、軍事政権から竹島密約の存在を申し送りされていなかったのだろう。密約について死ぬまで秘密にするとした当事者の中で、金・泳三と言葉を交わせる人間はいなかった。朴大統領の下で、外務長官や駐日大使などの実務レベルの『雇い』たちに詳しく話しておかなかったために、その後の官僚たちがその内容を知るはずもなかった。金・泳三政権は意図せぬ『不作為』から竹島密約を破ることになったといえる」 248頁

 中国との尖閣諸島問題でも日本は日中国交回復のときに曖昧にしておいて、後に中国は国内法に尖閣諸島は中国のものと一方的に書いてしまった。どちらの場合も韓国や中国が国力を回復した後になって密約を一方的に破棄してしまったのである。そこで日韓基本条約が結ばれた時代は日本の方が圧倒的に力が強かったのだから、日本がもっと強く出るべきではなかったのか、という考えが出てくるのである。同様のことは中国にも当てはまる。

 ロシアとは北方領土を密約にして平和条約を結んでいないことを加えて考えれば、中国と韓国の場合は日本の「アジア主義」が関与しているのではないか。
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by masaya1967.7 | 2008-11-24 04:03

年金テロと2.26事件

 今日のニュース・ステーションで東大の月尾教授が今回のテロを5.15事件と比較していた。私も今回のテロ事件が昭和前期の歴史に似ていると思っているのでそのことについて書いてみたい。

 『昭和20年』、『日米開戦の謎』の鳥居民さんが戦前において国内的に最も影響があった政治的事件は2.26事件だとしている。この軍部によるクーデターが起こったときに真っ先に鎮圧せねばならないと思ったのは昭和天皇と後に内大臣となる木戸公爵であった。ところが一般国民の反応はどうかといえば、鎮圧に賛成であるという状態からはほど遠かった。当時の日本も不況が激しく、農村では娘達が売られていき、日本の国内では政治的な不満が高まっていた。

 ところで日中戦争が後に泥沼化するのだが、その時の陸軍の上層部、東条英機、杉山元、梅津美次郎といった将官達は皆2.26事件において鎮圧に賛成の立場の人たちであった。後に近衛首相がアメリカとの戦争を防ぐために中国からの撤退を軍部に認めさせようとするが、そうなれば彼らの責任問題となり、それは必然的に2.26事件の賛否に結びついてしまうのである。鳥居民さんははっきりとは書いてないが、昭和天皇や木戸内大臣が中国からの撤兵問題を深く追及しなかった、またはできなかったのは2.26事件の判断にあったのではないかと推理されている。もし国民が2.26事件の鎮圧に断固賛成していたら昭和史も違った展開になっていたかもしれないのである。

 今回の年金テロ事件でも同じような構図が見える。マスコミはテロは反対だと言っているが、国民はその言葉に心から賛成しているのだろうか。払っていたはずの年金を受け取れない人々がたくさんいる一方で、制度を作った官僚達は天下りを続けてからも高価な年金を手にするのである。

 このような一般国民と指導者達の意識が乖離している状態は昭和前期の歴史以来だと私は思うのである。そしてこの問題を解決するためにはいち早く年金問題などを超党派で解決することである。くれぐれもブッシュ大統領のテロとの戦い(War on Terror)を真似しないように。
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by masaya1967.7 | 2008-11-21 23:38

「円建て米国債」

 今回の経済危機で麻生首相はIMFに10兆円拠出することを発表したが、ただ単にお金を出すだけで日本の国益は達成できるのだろうか。『産經新聞』の田村秀男編集委員は次のように書いている。

 「米国に「円建て米国債」を発行させる同意を取り付けるのだ。円建て債によって米政府は日本の預金者から資金を借り入れることが可能になる。ドルが急落すればその資金でドルを買い支える。日本にとっても為替リスクが抑えられ、同時に米国は財源を確保できる。」

 今月号の『Voice』にも三国陽夫氏が同様なことを述べている。

 「日本政府は円建てで、長期かつ超低金利の政策金融としてアメリカ政府に与信をする。アメリカ政府は政策金融としてアメリカの生産者にこの資本を提供し、生産者が日本やヨーロッパから設備材を輸入できるお膳立てをする。アメリカ政府が国債の信用を悪化させること無く、景気対策として財政支出を増やすために、日本政府はさらに外貨準備として保有する対アメリカ政府債券(米国債)の放棄も考えられる。マーシャルプランと同じような贈与となる。」

 円建て米国債発行のために日本の保有している米国債の放棄を提案しているのである。

 日本の財政状況が悪化したときアメリカの格付け会社は日本の国債をアフリカのボツワナと同じランクにしたことがあった。日本の国債は日本の国内で消化できるので問題は無かったが、アメリカでこれと同じことが起こったら、悲惨なことが起こるだろう。(アメリカの格付け会社が自国の国債をそのようにランク付けすることは無いだろうが)

 私は両者が主張する『円建て国債』に大賛成であるが、一つ気になることがある。先月の『朝まで生テレビ』で日銀出身の民主党代議士が円建て米国債発行を主張していたのだが、カウンターパートの自民党の議員がどうも乗り気でないのである。自民党は故金丸信の「アメリカあっての日本であって、日本あってのアメリカではない」状態から抜けきっていないのではないか。これから徐々に進む円高でアメリカにドルで援助するといった最悪の政策を行う懸念がぬぐいきれない。
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by masaya1967.7 | 2008-11-13 11:58

『竹島密約』を読む。2

 著者のいう『竹島密約』が韓国側から破られるようになったのは、金泳三政権以来の韓国で民主化が進んでからであった。

 「韓国の対日外交を「静かな外交」から「したたかな外交」に変えるという大きな流れでおこなわれている。「静かな外交」とは、独島はすでに韓国が「実行支配」している領土だから、日本側の領有権の主張に過剰に反応して「国際社会に日韓の間に領土紛争があるような誤解」をあたえるのは得策ではなく、静かに対応していくという路線である。それに対して「したたかな外交」とは、今述べたように独島に対する日本の主張を朝鮮半島に対する「新たな侵略」行為と位置づけて、これはしたたかに、強硬な姿勢を持って対処すべきだという路線である」 p254

 では、このことによって韓国の政治が軍事政権の時より、「したたかに」なっているのかといわれれば、決してそうなってはいない。それは金泳三政権の最後に金融危機にみまわれたことからもわかる。

 そして日本が韓国に援助を行っても「韓国の政権が国家運営に失敗して金融危機に直面し、日本からの援助を受けることはあっても、それは日本が「戦略的計算」をもって決めたことであり、感謝したり恩を感じたりする必要はない」と思っているから、日本も冷めた気持ちにならざるを得ないのである。

 日本が新学習指導要領に竹島を記載しようとしようとした時、韓国の駐日大使は日本に罵詈雑言をあびせて、韓国に帰っていった。しかし韓国でまたもや金融危機が起きそうになり、韓国は日本に助けを求めようとしているが、正直に言って日本はあまり熱心ではない。というのも日本の中川大臣は、日本の融資はIMFを通して行うと言っているが、IMFほど韓国で嫌われている組織も無いのである。

 今から振り返っても日韓の関係を円滑にするためには「竹島密約」は有益であったし、今もそれは変わらない。変わったのは韓国のポピュリズムであった。
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by masaya1967.7 | 2008-11-04 03:51

『竹島密約』を読む。1

 ロー・ダニエル著『竹島密約』によればその内容は次のようなものである。

 竹島・独島問題は、解決せざるを持って、解決したと見なす。したがって条約では触れない。

 (イ) 両国とも自国の領土であると主張することを認め、同時にそれに反論することに異論は無い。

 (ロ) しかし、将来、漁業区域を設定する場合、双方とも竹島を自国領として線引きし、重なった部分は共同水域とする。

 (ハ)韓国は現状を維持し、警備員の増強や施設の新設、増設を行わない。

 (ニ) この合意は以後も引き継いでいく。

 これらの合意は金泳三政権によって破られるまで続いた。
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by masaya1967.7 | 2008-11-02 07:05