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調子に乗る『北朝鮮』

  4月19日(日曜)の『産經新聞』に注目すべき北朝鮮関係の記事がのっていました。筆者にとってこの記事のインパクトは同じく『産經新聞』が以前、北朝鮮が核実験直後にブッシュ大統領に対して親書を出したことをすっぱ抜いた以上のものがありました。

 この記事によればアメリカ政府が北朝鮮によるミサイル発射を思い止まらせるために、カーター元大統領を訪朝させる計画をもっていたが、北朝鮮によって拒否されたというものです。

 筆者は北朝鮮政策担当のボスワース氏がミサイル発射以前に訪朝を計画して北に拒否されたことは知っていましたが、北朝鮮は「ボスワーズ氏ではなく、より格が上の人物でなければ話にならない」などと拒否した上で、カーター元大統領をも拒否してしまったのでした。どこまでつけあがるんだ北朝鮮。

 さらにこの記事で注目すべきなのは、北朝鮮側は「オルブライト、キッシンジャー両国務長官らの訪朝を望んでいたとされる」と書いているのです。

 筆者はここで考え込んでしまいました。カーター元大統領は1994年にアメリカが北朝鮮空爆寸前までいったところで、米朝核合意をまとめました。カーター元大統領は北朝鮮の体制にとって「命の恩人」と言っていいでしょう。おまけにカーター大統領は大統領在任中に在韓米軍撤退をやろうとしたから、当時の金日成が信頼したのも納得できます。

 では北朝鮮が拒否したカーター元大統領と北が望んでいるオルブライト、キッシンジャー両国務長官の違いは何でしょうか。カーター大統領はベトナム戦争の反省から、アメリカのコミットメントを減らそうと考えて在韓米軍の撤退を打ち出したのですが、それによって起きる力の空白部分は、日本や韓国などの同盟国の力を利用しようと考えていました。

 ところがオルブライト元国務長官は自分の本で「米国がアジアに中国すら太刀打ちできないような軍事力プレゼンスを有する目的は、日本防衛並びに日本が独自の軍事力を保持する事態回避の2点だ」と堂々と書いているのです。キッシンジャーも伊藤貫さんがたびたび指摘するように米中で日本の核武装を拒否するよう密約を結んでいたのではないかという疑惑をもたれています。この二人は米中による日本封じ込めが必要と考えているのです。

 これで明らかでしょう。北朝鮮は日本が自主防衛することを許すカーター元大統領を拒否して、日本の自主防衛を認めたくないオルブライト、キッシンジャー元国務長官を歓迎するのは、米中による日本封じ込めに北朝鮮も参加させてくれという合図なのです。北の核は「極悪」日本を封じ込める為の「正義」の核だ、などとアメリカに訴えたいのでしょうか。

 もちろん、このようなことが簡単に成就するとは思われませんが、パワー・ポリティクスとは恐ろしいものです。日米同盟が民主主義の「価値観」を同じくするものの同盟だ、などと楽観的に考えている人には猛省を促したいものです。故片岡鉄哉先生も日本にとって最大の脅威は米中の同盟だと警鐘をならしていましたが、それに北朝鮮が加わることは思いもよらなかったことでしょう。
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by masaya1967.7 | 2009-04-20 01:59

東郷和彦『歴史と外交』


 東郷和彦『歴史と外交』という本を読んだので感想を書いてみたい。著者は元外務官僚で、戦前の東条内閣で外務大臣を務めた東郷茂徳は氏の祖父にあたる。

 東郷氏は靖国問題に対してしばらくの間「モラトリウム」によって首相の靖国訪問を中断せよと主張している。その背景には氏の「日中間で歴史にかかわる問題が提起された場合、けっきょくのところ加害者の立場に立つのは日本であり、そういう日本が歴史に対して謙虚な姿勢をとり、相互接近のための第一歩を踏み出すことは、日本の道徳的な立場を強めるからである」という考えが背景にある。

 さらには、戦後賠償についても、「道筋としては、これまで、法的追求を恐れて控えていた謝罪と補償を、官民とともに人道的な観点から、自発的に実施するのである」とも書いている。本来、戦前のことは、日韓基本条約や日中共同宣言でいったん区切りをつけているはずなのに、それ以上のことを日本が謝罪や補償を行うことが日本の国益にかなうと東郷氏は考えているのである。

 「私自身は明確に、”河野談話派”だった。私の年代の外務官僚としてはそれが一般的な立場だった」と書いているから、今外務官僚のトップにいる人は東郷氏と同じ考えを持っていると推察される。

 ところがアメリカに対する東郷氏の考えは中国や韓国に対するものとは全然違うのである。アメリカの原爆投下は日本の非戦闘員をねらった明らかに国際法に違反するものであると私は考えるが、東郷氏は「他方において、原爆投下を巡る歴史認識の問題について、日本政府、国会議員、及び公の立場にある人は絶対に軽挙盲動しないことが肝要だと思う。いま、この認識を変えることを求めて、日本政府が対米交渉を行うのか。私は絶対に反対である」と書いている。アメリカに対して「歴史認識」を持ち出すなと主張しているのである。

 さらに東郷氏の祖父である茂徳氏が有罪となった東京裁判についても彼は同様の主張を行っている。「平和に対する罪」とは「1928年から1945年まで侵略戦争を企図し、計画し、準備し、指導した共同謀議が存在し、それは連合国及びその他の平和国家に対して遂行され、国際法及び、神聖な条約上の義務に違反する」というものだったが、これは現在からみても明らかな嘘がある。しかし、東郷氏は「政府レベルであるいは国会を含む公のレベルで、私は、この問題をいまけっしてアメリカに提起すべきではないと思う。それはまったく不要な過去の亡霊をもって未来の日本外交の立ち位置を脆弱化させることになる。我が国の国益に決してプラスになることはない」というのである。

 彼はアジア諸国に対しては、日本が歴史的なものに対して謙虚になることが日本の道徳的な立場を強めると説いていたはずなのに、同じことをアメリカにもとめることは日本の国益にならないと言っている。明らかに2重基準を使っているのだ。結局そのことは「東京裁判史観」を日本に定着させるだけの効果しか私はもたないと思う。そのようなことを戦前の対米交渉に苦労した東郷茂徳氏は望んでいるのだろうか。
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by masaya1967.7 | 2009-04-17 21:46

「吉田ドクトリン」は永遠か

 孫崎享氏は『日米同盟の正体』のなかで「戦後の日本は、自らの選択ではなかったが、軍事を捨て経済に特化するというモデルを採用した。結果として、グローバリズムが深化し、経済の相互依存性が高まる中で、この行き方が自国の安全を確保する手段となっている。これはキッシンジャーなどが予想しなかった安全保障政策である。」と書いています。彼は日本の外交はこれからも「吉田ドクトリン」が有効であると思っているようです。

 しかし、この政策は本当にこれからも有効なのでしょうか。今回の北朝鮮ミサイル発射を例にとって考えてみたいと思います。この問題はだんだんパターン化してきたみたいです。

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 最初に、世界から無視されたくない北朝鮮はミサイル発射という大胆な行動をとると予告します。

 中国は北朝鮮に影響力を持つのに、なかなか北朝鮮に対して圧力をかけたがりません。

 結局、北はミサイル発射を実行します。

 日本は怒って、国連に訴えます。最初はアメリカも日本に同調します。

 中国は日本に対して、「冷静」に対処するようにいいますが、北朝鮮にも同じように言ってほしいものです。

 アメリカが中国に圧力をかけて日本の提案を受け入れるようにしてほしいのですが、アメリカは米国債の問題で中国に弱みを握られているためか、中国に圧力をかけるようなことをしません。

 結局、日本は米国にはしごをはずされて実行力の無い「議長声明」を受け入れざるをえなくなります。

 最後に、『朝日新聞』が「日本の孤立」と書き立てます。
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 この構図は、北朝鮮の核実験のときも一緒でした。これからも6カ国協議が続く限りこのパターンは維持されるでしょう。結局、この構図では北朝鮮が無謀な行動をとり続けるとその分だけ日本の安全保障環境が悪化するので、日本も軍事力強化に努めることになります。テレビに何回も登場したミサイル・ディフェンスなども1998年のテポドン発射がなければ、整備されていなかったでしょう。今回は赤外線でミサイル発射を探知する早期警戒衛生を日本が持っていなかった為に誤探知問題が起こったので、日本はそれを獲得しようとするでしょう。韓国のマスコミは、北朝鮮の行動が日本の軍備強化に貢献していると、不安視しているのも一理あるのです。

 このように北朝鮮の行動はどう考えても日本の脱「吉田ドクトリン」に貢献しているのです。これからもこの傾向は続いていくでしょう。
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by masaya1967.7 | 2009-04-15 03:51

最強の軍隊


 戦争関係の本を読んでいたら、たまに「日本の兵・下士官、ドイツの将校、アメリカの将軍を組み合わせたら最強の軍隊ができる」、との説にでくわすことがある。この命題は正しいのだろうか。

 ここではこの説を考えるにあたり、この説を経済に応用して考えてみたい。戦争も経済も個人で行うよりも組織で行うものであり、戦争や経済で「強い」という意味はいかにその組織が「効率的」に運用できているかを問うものである。経済の効率性は単位時間にいくら生産できるかをはかる「生産性」で表すことが出来る。

 日本が戦後、経済で急成長した背景には、製造業での急激な生産性上昇があったからである。代表的なのはトヨタ自動車の「カイゼン」だったり、家電業界のTQC(トータル・クオリティー・コントロール)などであった。

 ここでの問題はトヨタのカイゼンは誰の能力を活用しているか、である。これはどう考えても末端の労働者である。家電製品のクオリティー・コントロールの方も一般の労働者である。こう考えると日本の経済の生産性上昇には一般労働者の優秀な能力が欠かせなかった。これは日本の兵隊や下士官が優秀だったとする説と共通するものがあると思う。

 同じようにドイツ経済が効率的なのは、マイスター制度などによるドイツ人の中間層の能力が高い為で、これはドイツ人将校の能力の高さととらえることができる。アメリカの場合はエリートの能力が高い為で、経済も軍事も現在世界のナンバー・ワンでいられるのである。

 一般日本人の能力、ドイツ人の中間、アメリカ人のトップそれぞれの能力が高いのはやはり教育制度のたまものであろう。日本の寺子屋からはじまる初等教育、ドイツのマイスター、アメリカの高等教育、これらが能力開発の源泉になっているのである。おそらくこれら全てを組み合わせたら世界最強の国家ができあがるであろう。

 このように考えると、日本の兵・下士官、ドイツの将校、アメリカの将軍を組み合わせたら最強の軍隊が出来上がるという説は、まんざら嘘でもないのである。

 日本の「官僚」は自分たちの能力が高いと考えがちだが、それは大間違いである。第2次世界大戦でも明らかになったように、日本のエリートはアメリカのそれと比べて劣っているから、戦争に負けたのである。いくら下が優秀でも上が無能であれば戦争に勝てないのである。経済でもいまみたように、生産性上昇に寄与したのは一般労働者の能力であり、官僚は全く関係がなかったのである。

 最後にこの説を使って「中国大国論」を検証してみたい。中国には日本のようにしっかりした一般労働者が多数存在するのだろうか?ドイツのように優秀な中間層がいるのだろうか?アメリカのように優秀なエリートがいるか?どの質問に対してもイエスと答えるのは難しいと思われる。現在の中国大国論はやはり幻想の部分が多いのである。

 
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by masaya1967.7 | 2009-04-07 18:40

ロンドンでの日中会談

【ロンドン=尾山宏】麻生首相は2日夜(日本時間3日未明)、ロンドン市内のホテルで中国の胡錦濤国家主席と会談し、北朝鮮が弾道ミサイルや人工衛星を発射した場合、国連安全保障理事会で同国を非難するなどの決議を採択すべきだとし、協力を要請した。

 胡主席は日本の懸念に一定の理解を示したが、決議の是非は明確にしなかった。首相が29、30日に訪中することで合意した。

 首相は「発射は国連安保理決議違反で、容認できない。強行する場合、安保理で決議を採択して強いメッセージを発信することが重要だ」と述べた。

 これに対し、胡主席は「事態を注視している。様々なルートで北朝鮮に(発射自制の)働きかけを行ってきた。発射されれば、日本国民の中で大きな反響もあろう」と語った。一方で、「情勢がエスカレートしないよう、冷静に対処することが重要だ」とも述べた。
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 日本や欧米のマスコミでは中国大国論がさかんに流されております。現に今回のロンドン会議でもアジアでの時刻表時が東京から北京に変えられていたとの報道があります。しかし、私はかねてからそのことについて疑問を持っています。

 中国が本当に力を持っているのなら、属国である北朝鮮のミサイル発射ぐらい止めれるだろうと思うのですが、中国はなかなかその影響力を行使することがありません。北朝鮮に圧力をかけても北朝鮮はいうことをきかないと中国は思っているのでしょうか。

 いずれにせよ、北朝鮮のような国に対して何の影響力も行使できない国が、将来アジアをおさえ、アメリカと敵対する国になるとはとうてい思えないのです。確かに中国の核は日本にとって脅威ですが、それ以外に怖いものはあまりないのです。

 「中国大国論」に踊らされるのはやめましょう。

 
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by masaya1967.7 | 2009-04-03 16:38