<   2009年 06月 ( 4 )   > この月の画像一覧

北朝鮮から亡命した外交官コ・ヨンファンの分析

 今日の『産經新聞』に北朝鮮から亡命した外交官コ・ヨンファン氏の分析に同意することがあるのでここで感想を書いときます。

 「北朝鮮は以前は中ソ(当時)の矛盾を利用し実益を得る外交をしたが、今は米中の矛盾と軋轢を利用している。『我々が崩壊すれば中国との国境が危険になるのだから、われわれを支援しないはずは無い』という開き直りがあるのも事実だ」

 私はこの分析に100%同意します。しかし彼は結論として次のように書いています。

 「要求することは正々堂々と要求しなければならない。中国の北朝鮮に対する影響力は絶大である。北朝鮮が非核化をせず、緊張緩和にも踏み切らなければ『中朝友好協力相互援助条約』を破棄することも可能と通告することも出来るし、支援を中止することも出来る。超大国の中国が国際的ルールを外れ勝手に行動する北朝鮮に頭を下げる姿は見苦しい」

 コ氏は国連の安保理の北朝鮮決議で中国が賛成したことによって中国が北朝鮮にいよいよ圧力をかけるようになったとみているが、実際は国連決議に3週間もかかったのは、中国がこの決議をいかにして薄めることに腐心したあらわれに違いない。そこで中国が北朝鮮に圧力をかけるようになったと考えるのは間違いだと私は思う。

 結局中国は北が核武装しようが北朝鮮の生存が第一なのである。コ氏はまた「北朝鮮が『核保有国』になれば、日本も韓国も、核武装しなければならないだろう」とも書いている。これが実現しそうなとき、はじめて中国は北朝鮮の核を真剣に考えるようになるだろうが、これはアメリカが許さないから、中国は心置きなく北朝鮮に援助が出来るのである。
[PR]
by masaya1967.7 | 2009-06-25 12:10

イラク戦争とアブ・グレイブ収容所


 何故「自由」なイラクを目指したアメリカのイラク戦争は「アブ・グレイブ」化してしまったのでしょうか。エマニュエル・トッドの『帝国以後』に興味深い記述があります。

 「アメリカのケースは、普遍主義と差異主義という対立競合する2つの原理に対するアングロ・サクソンの2面性を極端かつ病的な形で表現している。アメリカ合衆国はまずは徹底的普遍主義の民族的・国家的成果として記述することができる。何はともあれアメリカ合衆国というのはヨーロッパの全ての民族から供給された移民の融合から生まれた社会である。当初のイングランド人からなる中核は、様々に異なる民族的出自の個人を吸収する能力が完璧にあることを示した。1920年代後半に中断した移民流入は、60年代に再開したが、今度はアジアと中南米まで範囲を広げることとなった。統合する能力、中心核を拡大する能力こそがアメリカの成功の秘訣であり、アメリカ合衆国の先行きにおける帝国としての成功はこれにかかっているのである。2001年には2億8500万人で2025年には3億4600万人と予想される人口量だけでも、この能力の証明となっている」

 トッドの言葉を私流に解釈すれば、アメリカが掲げる「自由民主」主義は雑多な民族を一つにまとめあげる接着剤の役割を果たしているのである。一方負の側面としてトッドは次のように指摘しています。

 「しかしアメリカ合衆国はまた、これとは反対の根底的な差異主義という用語でも描写することが出来る。アメリカ合衆国の歴史には常に他者というものが存在した。異なるもの、同化しないもの、殲滅か、大抵の場合、隔離を宣告されたものである。インディアンと黒人がこの異なる人間の役割を演じてきたし、黒人の場合は今日でも演じ続けており、インディアンの場合は、ヒスパニックに形を変えて演じ続けている。アメリカのイデオロギーシステムは、普遍主義と差異主義を組み合わせて一個の総体としているのである。」

 このようにアメリカの掲げる普遍主義の裏にはいつも「人種主義」という悪魔が潜んでいるのです。イラク戦争も本来はサダムフセインの圧政からイラク人を開放して「自由」をもたらすことが目的でしたが、それに反対する人々はアメリカの「人種主義」によって辱められるのでした。アブ・グレイブがそれを示しているのです。
[PR]
by masaya1967.7 | 2009-06-20 11:43

アメリカの分裂?



 『アメリカはどれほどひどい国か』という本の中で日下公人さんが「人種対立の行き着く先は『アメリカの分裂』でしょう」と語っていますが、具体的なことはあまり述べていません。私は日下さんの言論の大半には賛成なのですが、彼の主張のほとんどは直感的であって公の場で彼の説をおおっぴらに語ることは危険を伴います。

 今回は「アメリカの分裂」というテーマで書いてみたいと思います。ここでは「大英帝国」と「アメリカ帝国」との「比較」という点から考えてみましょう。あなたが「大英帝国」の特徴は?と聞かれて何と答えるでしょうか。私は「自由貿易」と「帝国主義」という異質のものが組合わさったものと考えています。下村治博士の『日本は悪くない』には次のように書かれています。

 「イギリスは当時世界を制覇していったが、その為の武器は自由貿易であった。自由貿易によって外国の産業をつぶし、巨額な輸出超過を累積し、それによって世界中の資本を支配し、世界中の港湾施設をおさえて世界帝国を建設したのである。」98頁

 下村博士はこの例としてインドをあげています。博士によればイギリスは自由貿易によってインドの紡績産業をつぶし、インドを綿花栽培国に転落させてしまったのだと書いています。

 この話には続きがあります。昭和初期の日本は繊維製品で異常なほどの競争力をつけるようになりましたが、それが結果的にイギリスがオタワ関税同盟で保護主義を用いるようにさせ、日本の商品を排斥するようになります。こうしてイギリスは「自由貿易帝国」主義のある種の普遍性を自分から捨ててしまうのでした。結局は第2次世界大戦の日本の一撃で大英帝国は崩壊に向かっていったのでした。(イギリス人が日本人を憎むのはこの歴史に原因があるのだと筆者は考えています。)

 では「アメリカ帝国」の原理は何なのでしょうか。私は「自由民主」主義(Liberal Democracy)と「人種主義」(Racism)の組み合わせにあると考えています。ピューリタンは宗教的自由を求めてアメリカに渡りましたが、行ったのはインディアンの皆殺しでした。

 「アメリカの独立宣言を起草したトーマス・ジェファーソンは、サリー・ヘミングスという黒人奴隷を所有し、子を孕ませています。そのジェファーソンが『人類は等しく作られた』と平気で口にする偽善ぶりといったらない」と『アメリカはどれほどひどい国か』で共著者の高山正之氏が書いていますが、全く同感です。

 さらにファリード・ザカリアが『富から力へ』の中で書いていることなのですが、20世紀初頭のアメリカで盛り上がった反帝国主義の主張には正反対のものが存在しました。他国を植民地化するということは他国の人々の自由を奪うものだという「自由民主主義」的見地からのものと、他国を併合してそこに住んでいる有色人種に選挙権を与えることは嫌であるという「人種主義」の観点から帝国主義に反対したのでした。

 また、ウッドロー・ウィルソン大統領といえば勢力均衡外交に反対し、海洋の自由や貿易の自由を求めた「リベラル」外交の象徴ですが、彼は日本が当時提出した「人種差別撤廃法案」を国際連合でつぶしてしまった張本人でした。ウィルソン大統領のなかでもリベラルであることと人種主義であることは矛盾無くつながっていたのです。

 今まで述べてきたことは全て第2次大戦以前のことであり、戦後のアメリカは黒人開放もありアメリカの「人種主義」は随分弱まってきたのではないかという識者がいます。私も今までそう思ってきましたが、どうも違っているようです。というのも、ブッシュ大統領(息子)が始めたイラク戦争はイラクに民主主義をもたらし、その民主主義が他の中東諸国に広がっていくという理想主義的なものでしたが、実際に目立ったのはアブ・グレイブやガンタナモ収容所などの人種主義的な行動でした。「アメリカ帝国」のイデオロギーである「自由民主主義」と「人種主義」は21世紀に入っても健在なのでした。

 さて「大英帝国」の場合、「自由貿易」というベクトルは普遍性を持っていたため現在の世界もそれを受け継ぎましたが、「帝国主義」の部分は全く普遍性を持たなかったためイギリスはインドを筆頭に大部分の植民地を喪失することになりました。では「アメリカ帝国」の場合はどうでしょうか。私はアメリカが主張する「自由民主」主義は普遍性を持っているためそれは世界に広がっていくと思っています。中国もいずれ民主化するでしょう。

 「人種主義」の部分はどうでしょうか。残念ながらこれには全く普遍性がありません。この問題はアメリカ自身に跳ね返ってくるでしょう。故サミュエル・ハンチントン教授の『文明の衝突』を読んでいて驚いた部分がありました。それはアメリカに住んでいる有色人種の割合を色の濃淡で表したものでしたが(有色人種の割合が多ければ黒くなる)、アメリカにおいては北半分は真っ白で、南半分は真っ黒だったのです。この図表を見た時に私は南北の分裂を直感しました。

 さらにアメリカでは2050年以降になると白人がマイノリティーに転落するといわれています。「人種主義」イデオロギーがある国でこのような状態に耐えられるとは思いません。アメリカはオバマ大統領を選出したではないかという人もいるでしょうが、オバマを支持したのは北に住む人たちで、南に住む人は反対していました。

 強大な「アメリカ帝国」を現代の「ローマ帝国」に例える識者がいますが、ローマ帝国は東西に分裂しました。アメリカは南北に分裂するでしょう。

 
[PR]
by masaya1967.7 | 2009-06-19 15:53

総括 北朝鮮の核問題

 久しぶりに北朝鮮の問題について書いてみます。

 
 北朝鮮が核実験を行った直後、伊豆見元静岡県立大学教授が今度は中国が厳しく対処するだろうと予測していましたが、私はそれについて懐疑的な見方をしておりました。結局国連決議も中国の努力によって効果が薄められ、あまり意味のないものになってしまいました。結局中国の優先順位は「北朝鮮の存続」にあることがはっきりしました。

 東京放送の日曜朝の討論番組で代議士の加藤紘一氏が中国軍の幹部にあって話したところによれば、北朝鮮は経済規模も非常に小さく核実験を行ったとしてもあまり騒がない方がいいと言われ、私もそう思うと語っていました。中国の軍関係者が北の核実験を過小評価するのはよくわかります。彼らはこの問題が発展して日本の核武装などに発展して欲しくないのでこのような言い方をするわけですが、北朝鮮が核武装をすることが加藤紘一氏のような日本の代議士にとって小さな問題なのでしょうか。中国のエージェントみたいな発言としか私には理解が出来ませんでした。

 このような中国に対して北朝鮮の核問題に真剣に対処させるには、田母神元将軍が言っているように日米のニュークリア・シェアリングや日本の核武装ではないかと以前にこのブログで書きましたが、同じことを『産經新聞』で東京特派員という変わった肩書きをもつ人が書いていました。私は結構この東京特派員氏の記事が好きです。一方田母神元将軍の意見について同志社大学教授の村田教授は日本のフラストレーションの現れだと紙面上や『朝まで生テレビ』で本人に向かって罵倒していましたが、村田氏のフラストレーションの方が気がかりです。

 結局日本はアメリカにニュークリア・シェアリングを提案することはせずにこのままずるずる受け身的に北朝鮮の核兵器能力向上を傍観することになるでしょう。しかし北朝鮮という国家が生き残れるのも中国共産党が存続しているからです。中国共産党が崩壊するまではアジアには平和はやってこないのです。

 長谷川慶太郎氏などは10数年前から中国の崩壊を予測していましたが、それが実現することはありませんでした。最近読んだ説得力のある中国崩壊論はジョージ・フリードマンの『次の100年』に書いてありました。フリードマンによると中国は30ー40年のサイクルで歴史が流れているようなのです。中国はイギリスに香港を譲ったのは1842年。1875年頃、ヨーロッパ諸国が中国の朝貢国を支配するようになる。1911年に清朝は孫文の革命によって倒された。1949年毛沢東が中国を支配するようになる。毛は1976年に亡くなり、それから経済開放の時代が始まる。2010までに中国では国内対立と経済衰退が始まる、と予測しています。確かに30年位で中国では政策が極端に変わっています。

 2010年まであと1年もありません。今回の世界的不況は長くなりそうなので、この長い不況が終わる頃には中国共産党がなくなっているといいのですが。
[PR]
by masaya1967.7 | 2009-06-16 16:21