鳩山論文

 ニューヨーク・タイムズに載った鳩山次期首相の書いた A New Path for Japan を抄訳してみました。

 冷戦が終わってから、日本はグローバリゼーションという市場原理主義の波にのまれている。

 いかに日本は市場原理主義の悪影響からのがれられるだろうか。

 友愛精神に戻るしかない。

 最近の経済危機はアメリカ式の市場原理主義が他国の伝統や歴史を無視した過程で起こしたものである。

 各国の経済秩序はその国の歴史と伝統からできている。しかしグローバリゼーションはそれらを破壊した。

 友愛主義では農業や環境、医療をグローバリズムの影響だけに任せるわけにはいかない。

 次の友愛という言葉から生まれるテーマは、東アジア共同体である。もちろん日米同盟は大事だが。

 しかし、我々の場所とアイデンティティーはアジアにある。我々はアジアに対して経済協力と安全保障の秩序を作らなければならない。

 アメリカのイラク戦争における失敗と経済危機で、我々は今多極化する時代にいる。

 アメリカはこれから2,30年間は先頭を走る国家であろう。一方中国も大国になってきている。

 この2つの大国に挟まれる日本はいかに独立をたもっていけばよいのだろうか。東南アジア諸国はアメリカの軍事力は地域の安定を保つものとして歓迎しているが、アメリカの過度の政治的影響力は受けたくないと思っている。また中国からの軍事的な影響に脅威を感じてもいる。

 アジアではマルクス主義やグローバリズムは停滞しているが、ナショナリズムが勃興している。

 いかに我々は各国のナショナリズムを抑制して、アジアにおいてルールに根ざした経済協力と安全保障の秩序を作ることが出来るのだろうか。

 さらに我々はアジアにおいて共通の通貨を作らなければならない。

 しかしアジアには領土問題などのさまざまな摩擦が存在する。これを2国間交渉だけでは解決できない。このような問題は地域の統合を加速しながら解決するしか無い。

 この方法こそ日本国憲法の平和主義を体現する方法だと思う。
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# by masaya1967.7 | 2009-09-01 05:11

自民党とは何だったのか。

 自民党が衆議院選挙で負けたことを契機として、自民党とは一体どのような政党であったかを復習してみたい。故片岡鉄哉先生は次のように書いています。

 「自民党とは、吉田の『平和主義』と官僚主義を封じ込める為に、政友会の党人が考案した政党組織なのである。その旗印は、いうまでもない。憲法改正、不平等条約改正、再軍備、自主外交、占領行き過ぎ是正であった。」

 私も、これらのアジェンダには全て賛成である。また

 「では自民党のレーゾンデートルとはなにか。自民党が党として果たす機能とは何なのか。肝心要の機能とは何か。
 それは安保体制を握り、運営することである。この機能に関しては、鳩山派と吉田派が必ず一致団結して、社会党の攻撃から身を守るのである。それ以外の争点、例えば憲法については自民党は割れるがこと安保になると団結するのである。
 言葉を変えて言うと、自民党は占領の落とし子である政治3極構造を前提として成り立つ。鳩山派と吉田派が安保を守り、吉田派と社会党が憲法を守る。これで3極構造が成り立つ。」

 本来なら冷戦が終わった後で自民党の吉田派の流れを汲むものと、鳩山派の流れを汲むものが分裂すべきであった。そうすれば日本の政治はもっとすっきりしたものになったであろう。ところが自民党は権力維持の為に社会党と連立を組んでしまうのであった。

 今回、自民党は野党になったのだから、自民党の原点である憲法改正などの保守の原点に戻って欲しい。その為にも私は「分裂」することも恐れるなといいたい。ここで自民党が安倍晋三的なものと加藤紘一的なものが結びついたままだと、民主党と同じく訳の分からない政党が日本に2つ存在するだけになってしまう。そうすると永遠に政界再編が出来なくなる恐れがあるのだ。
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# by masaya1967.7 | 2009-09-01 00:28

自民党の敗北

 マスコミの予想通り、民主党が300議席以上とって大勝しました。しかし私の興味は野党となった自民党にあります。

 田原総一郎の番組で安倍晋三氏が出演し「保守の理念を訴えるべき」「立党の精神にもどるべき」と力説していたのが印象的でした。冷戦が終わって以降自民党は社会党や公明党などと連立を組み、権力維持の為には理念などいらないような態度をとってきたのが私にとっては不満でした。これからの自民党に期待しています。

 さて同じ番組で、田原氏が民主党議員に向かって、非核3原則の法制化を訴えていましたが、河野太郎議員が、北朝鮮の核が存在するのにアメリカの核持ち込みのオプションを放棄するつもりかと訴えていました。この質問の後、民主党議員は私の知る限り誰も反論していませんでした。このような建設的な議論ができるのも政権与党よりも右の政党が野党にいればこそです。これで鳩山首相の変に理想主義的な外交政策をうまく抑止してくれるでしょう。

 後は本当に民主党がこれまでの自民党と異なったガバナンスをしてくれるのかをゆっくりみてみたいと思います。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-31 03:57

鳩山由紀夫とアメリカとの早速の衝突。


 以前書いたブログで鳩山由紀夫氏がいずれアメリカと衝突するのではないかと、書いたが、総理大臣になる以前に衝突してしまったようである。

 鳩山氏がニューヨーク・タイムズに寄稿した論文を巡り、アメリカの識者に多大の違和感を与えた模様である。『朝日新聞』によれば、鳩山氏の論文に対して元米政府の関係者の一人は「グローバリゼーションについての米国への批判は一方的に過ぎるし、日米同盟の重要性に触れたくだりも、非常に少ない。鳩山氏はもっと日米関係に理解のある人だと思っていたのだが変わったのだろうか」と書いています。

 ここでやはり思い出すのが鳩山由紀夫の祖父である一郎氏とアメリカとの関係です。鳩山一郎は日本とアメリカは対等な同盟関係を結ぶべきだと考え、吉田茂式のアメリカに依存した関係は修正させるべきだと考えていました。当時、軍事的にアメリカから独立した日本ということは現実的には考えられなかったので、外交的に独立した日本をアピールしようとして考えられたのがソビエトとの国交回復でした。

 一方アメリカもダレス国務長官も吉田茂の軍事ただ乗り路線に反感を強め、より独立した日本との安全保障条約を締結しようとしたのだが、いざ鳩山政権がソビエトとの国交回復を行おうとすると、日本がソビエトよりになるかどうか不安になってきたのである。これには吉田派が鳩山は「赤」だと宣伝したことが一定の効果を果たした。結局ダレスは鳩山政権をつぶすことになるが、その結果アメリカに過度に依存した日本、というダレスが最も望まなかったものを手に入れることになる。

 現在のアメリカにもダレスの時と同じようなジレンマを抱えていると思う。オバマ政権はアメリカに批判的であり過度にアジア主義的である鳩山由紀夫氏に対して不安を抱いているに違いない。一方、業界と官僚と癒着した自民党に幻滅していることも間違いは無い。そこで鳩山政権と正面衝突して自民党の復権へ手を貸すことはダレスと同じ間違いを犯すことになるのだ。

 正直に言うと、私は鳩山家の日本のデモクラシーに果たした貢献は認めるものの、過度に理想主義に走った外交姿勢はあまり評価していない。彼は非核3原則をアメリカにきっちり守らせるというが、北朝鮮が核保有国となった今、日本にそんな余裕はあるのだろうか。

 鳩山由紀夫氏は首相に就任したらオバマ大統領と会いたいと言っているが、アメリカにいかなかった鳩山一郎氏と最も際立った相違点かもしれない。鳩山由紀夫氏はオバマ大統領との会談ではじめて国際政治の厳しさを知るのかもしれない。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-29 19:44

日本人の特徴

 アメリカの外交官アントワープ・マクマリーが書いた名著『平和はいかに失われたか』に日本人の特徴として次のようなことが書かれていました。

 「日本人は、表面的には感情を表さないように見えるが、実は深い憤りをひそかに育て、不意に逆上して手のつけられなくなるような国民なのだ。真の指導者と認めて忠誠を捧げている人たちによって抑制されなければ、とことんまで突っ走る性癖がある。」

 マクマリーによれば、日本人は耐えに耐えて突然キレてしまうと観察していたのだ。今回の総選挙の各紙世論調査を見ていて思ったことは、とうとう日本人は自民党に愛想をつかしてしまったらしい、ということである。私は自社さ政権が出来た時から保守政党としての自民党は終わったと思ってきたから、自民党が負けることについて異存はないのだが、逆にここまで自民党を支えてきた日本国民の忍耐強さに感嘆してしまう。

 野党になった自民党はしっかりとした保守政党に生まれ変わって欲しい。いずれ国際危機がやってくるのだから。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-26 18:12

キッシンジャー


 クリントン訪朝の結果について、キッシンジャーがワシントン・ポストに書いていたので最後の部分を翻訳してみました。

 「10年も続く平壌との言い争いの根本原因は、北朝鮮が核兵器保有国となるかそうでないかの間に何の中間地点も無いことである。最終的な交渉の結果、北朝鮮は核兵器を破壊するか、事実上の核保有国になるかである。今のところ平壌は技術の進歩を交渉の段階で固定化させる上手な非妥協的な方法をとっているのだ。

 北朝鮮は我々をあたかも突然の突破口がひらかれるように導くかもしれない。2006年の北朝鮮の核実験の時におこったことと同じである。平壌は疑問無く事実上の核保有国をめざして終わりの無い、長い外交をしかけてくるであろう。今回のクリントン訪朝で明るい雰囲気になったかもしれないが、雰囲気と実質を間違えてはいけない。北朝鮮の核をある期間になくさなければ核拡散と世界の平和と安全に対する打撃となるであろう。」

 キッシンジャーはクリントン大統領の訪朝の結果、アメリカが安易に北との話し合いに乗り出すのを戒めているようです。北朝鮮問題の現在の構図は何としても核保有国であるとアメリカに認めさせたい北朝鮮とそれを拒否するアメリカという図式ですが、この勝負どちらが勝つのでしょうか。

 私はアメリカに対して若干の不安を感じています。というのも、『産經新聞』の湯浅博の記事によれば、以前に国家安全保障会議で朝鮮担当だったヴィクター・チャが「北の体制崩壊が無い以上、歯止めなき核計画を持つ独裁者と、国際監視下で上限を定められた核計画を持つ独裁者のどちらがましか」と問うているからです。アメリカがいつ優先順位を核拡散の方に向けてもおかしくないのである。

 当分、北朝鮮とアメリカの神経戦が続く。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-11 15:07

アメリカ人の消費


 今週のNewsweekで編集長のファリード・ザカリアがアメリカ経済が好転する為にはアメリカの消費の動向にかかっていると述べています。

 「2007年のアメリカの家計の全ての赤字は13.8兆 $で一人当たりの赤字額は1997年から2007年までに25000$から46000$までになった。そこでアメリカの家計は今回の経済危機によって収支を合わせようとするだろう。現に貯蓄率はここ15年の中で最も高い7%にも達している。ではアメリカ人はこのまま貯蓄を続けるのだろうか。」

 ザカリアはそうはならないだろうと主張している。引退したベービーブーマー達はお金を貯めるよりも消費に回すだろうし、そもそもアメリカの政策が消費に回すように出来ていると主張している、例えばアメリカには他の先進国どこにでもある消費税が存在しないのだ。そこでアメリカは一時的な危機が落ち着けば、また消費に向かうだろうと予測している。

 一方3週間前の同じくNewsweekでコラムニストのジョージ・ウィルはザカリアと全く反対のことを述べています。

 「第2次世界大戦が終了してから30年間以上アメリカの消費はGDPの61%から63%の狭い範囲内で推移している。ところが1983年から消費が拡大し2007年にはアメリカの消費はGDPの70%にも達したのである。もしも1983年以前のアメリカの消費が正常なものと仮定したら、2007年のアメリカの消費は1兆ドル少なくなるだろう」

 私はこの件に関する限りザカリアよりもジョージ・ウィルの方が正しいと思う。日本の場合はバブルの最中に企業が借金を重ね、バブル崩壊後は借金返済に追われ、お金が設備投資などにほとんど回らなかった。民間の投資が行われなくなった為に政府が過度の財政政策をとらざるを得なかったのだ。

 結局アメリカでも消費はあまり伸びず、良くて1%成長がしばらく続くのではないか。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-10 04:10

クリントン訪朝

 クリントンが訪朝して金正日と何を話し合ったのかが少しずつ表にでてきました。『朝日新聞』には次のように書かれていました。

 「金総書記はクリントン氏との会談で、朝鮮半島の平和と安全を守るための抑止力として核兵器を保有しているとの考えを表明。一方で、米国が北朝鮮への敵視政策を撤回する用意があれば、米朝協議の中で非核化などの核問題を話し合うことができるとした。北朝鮮の主権が尊重されていないとし、6者協議には復帰できないとの考えを示した。」

 毎度のことながら北朝鮮の主張する「敵視政策」の具体的な意味がわかりません。いつものパターンならこれで米朝交渉が始まり、となるのでしょうが、今回はアメリカも慎重なようです。『ニューヨーク・タイムズ」でニコラス・クリストフが北朝鮮問題について書いていましたが、その中で前国務省職員のMitchell Reissという人の言葉を取り上げていました。

 In the past, Mr. Reiss focused on engagement. Now he advocates “hard containment” — toughened sanctions backed by military force if necessary. (過去レイス氏は関与政策に焦点を合わしていたが、今日彼は「強固な封じ込め」を望んでいる)

 引退したとしても、アメリカ国務省の元職員がこのように変化したのは驚くべきことです。(ヒル次官補を見よ)さらにReal Clear Politicsという全米の新聞や週刊誌のコラムを全て表示してあるとても便利なサイトで、北朝鮮関連のものをいろいろ読んでみたのですが、もうアメリカはだまされないぞ、という気分がありありでした。(このサイトの存在は『日米同盟の正体』のなかで著者は知りました)

 クリントン訪朝をきっかけに、アメリカが北朝鮮との対話にのめり込んでいくということは、現時点であまり考えられないと私は思っています。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-08 06:51

井野誠一著『金正日の遺言』

 元外交官の井野誠一氏が書いた『金正日の遺言』にいくつか注目すべき点があったのでここに記述してみたい。

 「金総書記の考え方はこの間基本的に全くブレてないということだ。それは『核開発の完全放棄はしない。核開発そして核の保有は体制の維持、国家の安全保障にとって不可欠である』との考えである」
 「米国ら他国のいかなる干渉、妨害があっても核開発を続けるし、我々が先に白旗を掲げて、これを放棄することは無い」

 このように金正日は考えているらしい。そして彼らの究極的な目的は「オバマ政権に対し、従来の休戦協定を平和条約に切り替え、そして北の現体制並びに後継体制への安全を保証させること」にあるらしい。金正日はこの目的を核を維持したまま行おうと考えているようだ。

 ちなみにこの本はやたらと「平壌筋」とか「消息筋」という情報源で書かれているのだが、私にはそれが本当に正しいのかはわからない。ただこの本を読んだ印象では、こういう本に特徴的な至る所にある論理の破綻はみられない。この著者はとても慎重な人であると推察する。

 金正日は日本については次のように考えているらしい。

 「北側にはこの間変わらぬ認識がある。平壌情報によると、それはまず拉致問題を認めたことは絶対的な過ちであったということだという」
 「日本側が折れるまで、日本の要求はいっさい無視せよ。また6カ国協議でも日本の主張を無視しその存在自体が阻害要因だと訴えよ」

 最後に、著者の井野氏は「少なくとも近い時点でどちらが一転その姿勢を大きく変えることで事態が緩和される気配は見えない」とアメリカと北朝鮮の関係について指摘しているが、ついさっきクリントン元大統領が平壌から帰ってきたばかりである。

 これからも朝鮮半島情勢から目が離せないようだ。

 
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# by masaya1967.7 | 2009-08-06 07:23

アメリカ外交のこれからを考える。


 ヘンリー・キッシンジャーの『外交』にアメリカ外交の特徴が次のように書かれている。

 「アメリカの特異性はその歴史を通じて生まれたものであり、それは外交政策に二つの相反する姿勢をもたらすことになった。第1は自国の民主主義を完璧なものにすることによって、世界全体の理念の発信源となることが、アメリカの信じる価値観に最も良く合致するという考え方である。第2にアメリカの価値観は、世界の人々の為に自らが十字軍戦士として働くことを義務づけているという考え方である。汚れの無い過去へのノスタルジアと全く理想的な未来に対する強いあこがれの間に身を裂かれたアメリカの思想は孤立主義とコミットメントの間を揺れ動いてきた」

 そこで冷戦という反共「十字軍」が終わった時にアメリカは孤立主義的に振る舞うと考えた識者がいた。故片岡鉄哉先生は『退場するアメリカ』という本を書いたし、シカゴ大学のジョン・ミアシュハイマー教授は『大国政治の悲劇』で冷戦後アメリカは欧州から撤退し、欧州は第2次大戦前のようなややこしい状態になるだろうと予測していた。

 2009年の世界から考えて、彼らの予想は外れたといわざるをえない。では彼らの考え方は根本的に間違っていたのだろうか。私はそうは思っていない。その理由をここで述べてみたい。

 1992年3月8日のニューヨーク・タイムズが「米国戦略計画はいかなるライバルも出現しないことを求める」という記事を書いた。その記事の内容は

 唯一の超大国としての米国の地位を、十分な軍事力で永久化させる。

 危機において米国が単独で行動できるようにする。

 イラク、北朝鮮の核兵器保有を阻止する為に軍事使用の計画を考える。

 日独の軍事力増強、特に核兵器の保有を阻止する
 
 このようなことが書かれていた。(『日米同盟の正体』より)これは、言い換えれば、冷戦が終了したことを利用してアメリカが世界の覇権を軍事的に握ってしまおうと機会主義的に主張したのであった。これを書いたのが、後でブッシュ(息子)大統領の国防副長官のポール・ウォルフィッツであった。この文書はブッシュ(父)大統領の時にはあまりにも過激だとお蔵入りになったいたのだが、死に絶えてはいなかったのである。

 次に9.11事件が起こる。アメリカがアフガニスタンに攻撃を行ったのは、タリバンがビン・ラディンをかくまっていることが明白だったので、理解が出来たのだが、なぜかアメリカではビン・ラディンとサダム・フセインのつながりが指摘され、核兵器の開発と伴ってイラクとの戦争がいつのまにか始まってしまった。正直ここらあたりから私はアメリカの考え方がわからなくなってきたのである。

 結局、9.11を利用して軍事力で世界の覇権を握り、アメリカ主導で安定した世界を構築しようとウォルフィッツは考えたものと思われる。しかしイラク戦争は泥沼に陥ってしまった。ブッシュからオバマ大統領に変わりイラクを捨ててアフガニスタンに集中すると主張しているが、これもなかなかうまくいっていないのが現在の状態である。

 オバマ大統領の言動を見ていてアメリカが世界の覇権を握ることは間違っていないと考えている節がある。ただしブッシュ(息子)のやり方が悪かっただけと考えているのではないか。しかし、私はアメリカが単独で世界の覇権を維持するというモデルが根本的に間違っていると思う。

 日本は第2次世界大戦でアジアに覇権をとなえ安定させようとしたが、中国の奥地までは補給がもたなかった(インパールでの経験はインドまでの補給も確保できなかった)。ドイツはヨーロッパに2回も覇権を打ち立てようとしたが、2度とも失敗している。この事例から推測できるのは、アメリカ単独では世界に覇権を打ち立てることは出来ないということである。(このようなことは理論というよりも神様がそういうようにしたとしか答えられない)

 結局アメリカが軍事力で世界の覇権を握ろうとしてもうまくいかないのではないかという仮説を主張しているのである。このままいけば、いずれアメリカは疲れ果てるだろう。そうなったときにアメリカは現在の覇権主義的な行動をとるのではなく、バランス・オブ・パワー外交に戻らざるを得ないのではないか。そのときにキッシンジャーが指摘したアメリカの孤立主義的な面が鍵になってくるのである。
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# by masaya1967.7 | 2009-08-04 04:07