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久間防衛庁長官のしょうがない発言

 今朝の『サンデー・プロジェクト』で朝日新聞の編集委員の人が久間発言について、彼はアメリカのイラク戦争を批判していたからそのことへのリカバリーの意味もあったのだろうと述べていた。

  久間氏はイラク戦争を批判したことで、チェイニー副大統領に会えなかったし、さぞ仕事がやりづらかったと思う。彼のイラク戦争の発言が間違っていたとは思わないが、ブレジンスキー元大統領補佐官に『保護国』と呼ばれるような日本の防衛大臣の言葉としては軽率すぎた。久間大臣が反省して、より日本の防衛の自立性に向かっていけば良かったのだが、彼は簡単に国を売るような発言をしてしまった。日本にはこんな政治家ばっかりしかいない。

 さて原爆について考えてみよう。私の最も尊敬する歴史家、鳥居民氏の説はこうである。ルーズベルト政権の末期、国務次官に日本滞在の経験の長いグルーがついた。グルーは日本が天皇の命を保証する条項があれば早期に降伏すると思っていた。しかしルーズベルトが亡くなった後大統領になったトルーマンは一向にグルーの要求を受け入れようとしなかった。

 それは何故だったのか。トルーマンは大統領になって初めて原爆開発の事実を知った。そして彼はそれを日本に対して使いたくなった。そこでグルーが望むような天皇条項を入れると、日本は原爆を落とす前に降伏してしまう。そこで天皇条項を削除した降伏条件を提示したのだ。鈴木貫太郎は当然それを『黙殺』することになる。

 さらにトルーマン大統領にとって気がかりなことがあった。それはソビエトの参戦であった。ソビエト連邦が原爆を落とす前に参戦すると日本が先に降伏してしまう可能性があった。日本はソ連に仲介を頼もうとしていたのだから、そのソ連に裏切られたら精神的ショックは大きいだろう。トルーマンは最初ソビエトに対して冷淡だったが、次第に態度を変えていく。その理由を鳥居氏はいつソ連が日本に侵攻することになるか、その日時を探ることにあったとの仮説を用いている。

 結局ソビエトの参戦前に、アメリカは日本に原爆を落とすことになるのだ。鳥居氏の説に説得性があるのは後に日本に提示されたポツダム宣言はそれ以前よりも天皇条項が入っていたことで融和的だったのである。なぜ原爆が成功したアメリカが日本に融和的になったのかの理由は彼の著作が示すように『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』だったからである。

 久間大臣の言おうとしたことは、「ソ連が原爆投下の前に、日本に参戦していたら日本は降伏していただろう。その代わりに日本は北海道をソ連に盗られていたかもしれない。だから原爆投下はしょうがなかった」という論理である。

 本当なら、こう尋ねなければいけなかったのである。何故アメリカはグルー国務次官の意見を入れて、天皇条項を入れた降伏条件をもっと早く提示しなかったのか。結局は日本に原爆を投下したかったからだろう、と。

 
by masaya1967.7 | 2007-07-01 23:48
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