以前、福田和也の文章で今回のアメリカのイラク戦争と100年前のイギリスのボーア戦争を比較したものを読んだことがある。アメリカの衰退を予感させるものだったと思う。ボーア戦争は1899年から1902年まで続き、イギリスは世界で最初の強制収容所を作るなどの乱暴な政策をとり、45000人のゲリラ兵を鎮圧するのに述べ45万人の兵力を投入している。アメリカのイラク戦争に事実よく似ている。ところがこの時代のイギリスとアメリカでは経済的状況が全然違うとザカリアは主張するのだ。
「1870年までにアメリカはほとんどの工業指標でイギリスにならび、1880年代の初頭には実際に追い抜いた。15年後のドイツがイギリスを追い抜いたように。第1次大戦までにアメリカの経済力はイギリスの2倍に達し、フランスとロシアを足したものはイギリスの経済力を超えていた。1860年にイギリスは世界の鉄の53%を生産していたが、1910年には10%に満たなくなるのである。」 174頁 この問題についてはザカリアの説明は全く正しいのだが、私の注目点は別のところにある。アメリカやドイツがイギリスを経済的に追い越そうとした19世紀の後半、イギリスは徹底した自由貿易を維持していた。ところがそれを追い越そうとするアメリカやドイツは高関税を維持して、保護貿易を行っていたのである。ちょうど第2次大戦後の日本のように。 ではこの頃、日本は何をしていたのだろうか。日本もアメリカやドイツのように保護貿易を行っていたらもっと早く経済大国になっていたのではないのだろうか、と考えるのは自然だろう。実は当時の日本は悲惨なことに関税自主権がなかったのである。これではアメリカやドイツのように高関税にするわけにはいかなかったのである。 さて日本は戦後、ザカリアが主張するように保護主義的で成長するのだが、これは決して特殊なことではない。19世紀後半のドイツやアメリカに前例があるのである。中国の経済発展の仕方の方が特殊なのである。よってザカリアが中国と日本を比較して中国がうまくいくのだという判断はあまりにも単純すぎる。 中国は資本や技術を他国から受け入れることによって、年間10%以上の成長を続けている。この他人の褌で相撲をとって他人に勝つという戦略は有効なのだろうか。結果はまだ出ていないが、この中国のやり方がうまくいくのなら、外資規制を実施しようとしている通産事務次官の首をそっこくはねなければならないだろう。
by masaya1967.7
| 2008-05-24 01:02
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