今月の『諸君』に櫻井よしこ女史が論文を書いていますが、疑問があるのでここに書いときます。
「わたしたちは田母神論文を非難するより、村山談話を厳しく検証し、その空ろさを非難しなければならないのである」と書き、さらに「靖国に堂々と参拝し、村山談話を見直し、中国の卑劣な圧力に屈しない姿勢を見せることが必要だ」と書いています。 私もこれ自体に文句は無いのですが、村山談話を修正することを日本の同盟国であるアメリカは許してくれるのでしょうか。従軍慰安婦の問題が起こったときに安倍首相はブッシュ大統領に謝ってしまったことを思い出せば、米国がすんなりとそれを許すはずが無いと思われるのです。しかしなんで従軍慰安婦の問題で日本の首相がアメリカの大統領に謝ることになってしまったのだろう。結局日米関係を整理しておかなければ、また同じようなことを繰り返すかもしれないのです。 櫻井女史はこの点についてこの論文では書いていませんが、日本人が全面的に信頼できるアメリカ人の名前を挙げています。彼女は戦前に中国の公使であったアントワープ・マクマリーのメモランダムからかなり引用しています。マクマリーは戦前のワシントン体制時に国民党が日本の合法的な権益を無視する危険性を終始警告していました。 「我々は日本が満州で実行し、そして中国その他の地域においても継続しているような不快な侵略路線を支持したり、許容するものではない。しかし日本をそのような行動に駆り立てた動機を良く理解するならば、その大部分は、中国国民党政府がしかけた結果であり、事実上中国が『自ら求めた』災いだと、我々は解釈しなければならない。」 このメモランダムに感銘を受けたのが、当時の駐日大使だったジョセフ・グルーであり、戦後にこのメモランダムを読んだジョージ・ケナンであったことも櫻井女史は指摘しています。 私も、マクマリーのメモランダムを読んで感動したし、ケナンの本も何回も読み返したことがある。彼らの言論は日本人にとって信頼できるものといっていい。しかし当然のことだが、彼らの考え方はアメリカ人全員を代表していない。さらに残念なのはアメリカの中では圧倒的少数派の考えなのである。実際彼らの行動を見てみよう。 中国公使だったマクマリーは結局自分の行動が認められず、外交官をやめることになった。ケナンもソビエトに対して政治的な「封じ込め」を提案していたのにそれがいつの間にか軍事的な『封じ込め』に変わったことに傷心してワシントンをさることになった。そしてなによりもうまくいかなかったのがグルーの場合だった。 グルーは近衛首相とルーズベルト大統領の頂上会談を計画して日米戦争を回避しようとしたのだが、ホーンベックにつぶされてしまった。さらにグルーは太平洋戦争後半に登場し、今度は日本の天皇制を認めることで早期講和を達成しようとした。しかしトルーマン大統領はこれを無視して日本に原爆を2つ落としてしまうのである。(鳥居民さんの研究による) このように櫻井女史が信頼できると考えるアメリカ人はいずれも権力基盤が弱く、権力闘争に負けているのである。よってこれらのアメリカ人がいるから日米関係は大丈夫だと考えるのは危険なのである。(続く)
by masaya1967.7
| 2008-12-02 05:10
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