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下村治著『日本は悪くない悪いのはアメリカだ』

 この本は20年前に出版され今年文芸春秋社から再販されたのですが、読んで驚きです。全然古くありません。こんなに偉大なエコノミストが日本にいたとは思いませんでした。下村博士は次のようになると予言しています。

 「言うまでもなく、他の国にとっては対米輸出が減ってしまう。従ってデフレになるのは目に見えている。
 世界中がアメリカの砂上の楼閣に支えられて、見せかけの繁栄を築いているのだから、この砂上の楼閣が崩れれば、見せかけの繁栄も崩壊するのは当然であろう。
 つまり、今までの状態はどうかというと、アメリカが無理して急膨張した為に世界中が引き上げられ、調子が良くなっているに過ぎない。世界中がアメリカへの輸出を増やし輸出主導の経済成長を享受しているに過ぎないのである。
 そのためにアメリカは巨額な国際収支赤字になっているのだ。
 それなのに、不況にならないでアメリカの赤字を解消するのは虫がよすぎる。アメリカが双子の赤字をなくすということは、世界の好況を支えてきたこれまでの無理を止めるということだから世界経済が逆戻りすることは当然のことだ。不況に直面することは不可避である」

 2009年初頭の状況をこれ以上の言葉で予見するのは不可能であろう。下村博士がこの状況になるとの予想の契機となったことは、レーガン大統領の経済政策であった。レーガンは大幅な減税と軍拡を含む大幅な財政支出の拡大を行った。その結果アメリカは自国で供給できる以上のものを消費したために国際収支が大幅に悪化したのである。その結果。

 「おそらくこのままいくと、やがては1兆ドル以上の債務超過国になってしまうかもしれない。
 と、なるとこのような債務をアメリカは返済する能力があるのだろうかという疑問がおこってくる。元金どころか利息を支払うのも、国際収支が黒字にならないとどうしようもない」(2007年度で7390億ドル)

 下村博士はアメリカが赤字を永遠に垂れ流すことはできないと考えておられたのです。レーガンの経済政策でアメリカは赤字を出しましたが、それとは反対に日本はアメリカへの輸出が急拡大します。アメリカが自国で供給できる以上のものを消費した為に日本の黒字が急拡大したのはあたりまえだったのですが、なんとアメリカは日本に対して、「問題の本質は、日本経済が国際収支で黒字をだしてしまう構造になっておりその原因は市場の閉鎖性にある、だから市場を解決すれば問題は解決する」というヤクザまがいの難癖をつけてきたのです。
 本来アメリカの消費過剰でおこったものが日本市場の閉鎖性のせいにされてしまったのです。

 『構造改革』という言葉が生まれたのもこの時代でした。それから20年日本はこの言葉に悩まされてきました。竹中大臣によれば日本が現在の経済的苦境にあるのは「改革」をやめてしまったからだといっていますが、本当でしょうか。今一度『構造改革』を再考するべきでしょう。このままでは『構造改革』という言葉はトロッキーの『永久革命』みたいになってしまうかもしれません。

 下村博士の本はこれ以外にも深い内容を伴ったものがあるので、少しずつ紹介したいと思います。
by masaya1967.7 | 2009-03-03 07:46
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